センテオトル / シンテオトル【Centeotl / Cinteotl】
珍奇ノート:センテオトル ― アステカ神話に登場するトウモロコシの神 ―

センテオトルとは、アステカ神話に登場するトウモロコシの神のこと。

アステカ社会における主食を司る神であったため、広大な範囲で信仰されていた。


基本情報


概要


センテオトルは、アステカ神話におけるトウモロコシを司る神である。その名はナワトル語の「centli(トウモロコシ)」と「teōtl(神)」に由来し、文字通り「トウモロコシの神」を意味する。トウモロコシはアステカ社会における主食作物であり、経済・宗教・宇宙観の中心を担っていた。そのため、センテオトルはトウモロコシの生命力を神格化した存在と理解されている。

アステカ神話におけるセンテオトルは、主に図像や祭祀、暦体系を通じて理解されている。図像については、主にトウモロコシの穂を頭飾りにした若い男性の姿で、顔や身体に縦線や彩色が施されて描かれる場合もある。これはトウモロコシ自体を神格化したものと解釈されている。また、アステカの暦体系『トナルポワリ』においては、特定の日や周期と結びつく守護神の一柱に位置づけられている。

植民地時代初期(16世紀)の『メヒコ史(Histoyre du Mechique)』では「シンテオトル」と呼称されており、ピルツィンテクトリとショチケツァルから生まれた神であるとされる。シンテオトルは誕生後に自ら地中に潜ると、髪からは綿が、片方の目からはカカツリ(良質な種子)が、耳からはトウモロコシの最も優れた種が、鼻からチアが、指からはカモトリ(サツマイモ)が、爪から広幅のトウモロコシが生じたとされている。

この神話は、神の身体から作物が生まれる「ハイヌウェレ型神話」に相当するが、アステカ神話の中では知名度の低い異説に当たる。なお、アステカ神話の主流な説話では、冥界から地上に戻ったケツァルコアトルが、人間の骨から新たな人類を創造し、その食糧としてトウモロコシを与えるために、アリに変じてトナカテペトル(食物の山)からトウモロコシの種子を持ち帰ったとされている。

センテオトルの信仰については、トウモロコシの生育段階に応じた祭祀が行われ、特に発芽期や収穫期の儀礼は、農作業の節目であると同時に神と人間との関係を再確認する宗教的行為でもあったとされる。また、女性的側面を担うトウモロコシ神であるチコメコアトルと対をなす存在として理解されることが多く、場合によっては同一神格の異なる顕現とみなされることもある。

データ


種 別 神仏
資 料 『フィレンツェ写本』『ボルボニクス写本』『ボルジア写本』など
年 代 不明
備 考 「ハイヌウェレ型神話」に相当する異説神話がある