スター・ゼリー【Star Jelly】
珍奇ノート:スター・ゼリー ― 流星群の後に現れる謎の物体 ―

スターゼリーとは、欧米などで目撃されているゼラチン状の謎の物体のこと。

流星群の後に現れることから宇宙由来の物体ともいわれるが、生物の死骸や粘菌の一種などという説もある。

また、インドで降った赤い雨やエンゼル・ヘアと呼ばれる物体との関連性も指摘されている。


基本情報


概要


珍奇ノート:スター・ゼリー ― 流星群の後に現れる謎の物体 ―
珍奇ノート:スター・ゼリー ― 流星群の後に現れる謎の物体 ―

スターゼリーは、芝生や木の枝などに現れるゼラチン状の謎の物体で、アストロミキシン、アストラルゼリー、スターロット、スターショットとも呼ばれている。

流星群の後に発生することが多く、民間伝承では「半透明または灰色がかった白色のゼラチンで、流星群とともに降ってきて地球に堆積し、落下後まもなく蒸発してしまう」と伝えられているという。

目撃の歴史は古く、記録については14世紀まで遡ることができ、中世のイギリスにおいては辞書や医学書などで説明されているほか、詩人の作品の中にも登場している。

例えば、14世紀のイギリス人医師であるガデスデンのジョンは、自身の医学書にてステラ・テラス(Stella Terrae)という名で著しており、これを「地上に横たわる ある種の粘性物質で、膿瘍の治療に使用した」と記されているという。

また、14世紀のラテン語の医学用語集には「uligo」という名で「地球から放出される ある種の脂っこい物質。一般には"落ちた星"と呼ばれる」と説明され、1440年頃の英語辞書には「sterre slyme(星のスライム)」と記されているようだ。

スターゼリーは現在も盛んに目撃されており、特にアメリカ、イギリス、オーストラリアでの目撃例が多い。しかし、目撃情報によって、大きさ、形、色などの特徴が異なることが多いため、全てが同一のものを示しているとは言いがたい。

主な特徴としては、流星群の後に地表に発生することが多く、大きさは数センチから1.8メートル、色は半透明で白みがかったものが主だが、ほかにもピンク・パープル・イエロー・オレンジ・ブラウンなど様々なものが報告されている。

また、触れると溶けるように崩れ去ってしまうものや、硫黄のような悪臭を発するもの、触れると激しいめまいを起こしてしまうものなどの報告もあったという。

そのため、正体については諸説あり、鳥や動物の吐瀉物、カエルやワームなどの死骸、カエルのゼリー状の卵巣、粘菌の一種、シアノバクテリアの副産物、などの説が唱えられているが、一種の超常現象であるという意見もあるようだ。

なお、スターゼリーとされるものが科学的に分析されたこともあるが、その結果はサンプルによって異なり、粘菌とされたもの、DNAすら見つからなかったもの、など様々なものがある。

ちなみに、1950年にアメリカのフィラデルフィアで発見されたものは、直径1.8メートルの半球形で紫がかった霧を放っていたという特徴的なものであり、『ブロブ』というSF映画の元ネタとなったと言われている。

また、最近では日本での目撃も報告されており、その様子はTwitterやYoutubeなどに投稿されていることも多い。そのため、SNSなどで「スターゼリー」をキーワードに検索してみると、最新のものを見ることができるかもしれない。

スター・ゼリーの特徴
・流星群の後に地表に発生することが多い
・大きさは数センチから1メートル超と様々
・色は半透明で白、ピンク、パープル、イエロー、オレンジ、ブラウンなど様々
・隕石落下現場に発生することもあるという

正体の諸説
・鳥や動物の吐瀉物
・カエルやワームなどの死骸
・カエルやヒキガエルなどのゼリー状の卵巣
・粘菌の一種
・シアノバクテリアの副産物
・超常現象の一種

データ


種 別 UMA、超常現象
目撃地 アメリカ、イギリス、オーストラリアなど(アジアでも目撃例あり)
年 代 14世紀以前~現代
体 長 数センチ~1.8メートル
備 考 エンゼル・ヘア、エンゼル・グラスなどとの関連性が指摘されている

備考


科学的な見解


・18世紀の英国の自然史家であるトーマス・ペナント(Thomas Pennant)は、現在スターゼリーと呼ばれている物体が"鳥や動物によって吐き出されたもの"であると信じていたという。
・スコットランドでは「スターゼリーの正体はカエルやヒキガエルの卵巣である」という説が支持されている。その根拠は「両生類を食べる生物は栄養にならないゲル状物質を吐き出す」ということだとされる。
・ナショナル ジオグラフィック協会の委託を受けた科学者らが、アメリカで見つかったサンプルに対してテストを実施したが、この中にDNAを見つけることはできなかった。
・淡水性の藍藻類(シアノバクテリア)の一種であるネンジュモ(Nostoc)は、ゼラチン状の鞘の中に細胞のフィラメントからなる球状のコロニーを形成するが、通常では地上で見ることはできない。だが、雨上がりの後は膨張して目立ったゼリー状の塊になることから時々見ることができる。これが現在スター・ゼリーと呼ばれているものだろう。
・スターゼリーは突如として発生することから粘菌の一種であると考えられている。この物体は最初はゼラチン状の外観を呈しており、雨風によって形が変化してホコリのように散ると考えられている。また、スターゼリーの色については、マンジュウドロホコリ(Enteridium lycoperdon)にような印象的な白色から、マメホコリ(Lycogala epidendrum)のようにピンク・紫・黄色・オレンジ・茶色など様々な色のものが報告されている。

その他の見解


・超常現象を扱うアメリカの雑誌『Fate』は「スターゼリーは地球外を起源とする"cellular organic matter(細胞有機物)"であり、宇宙空間を漂う"prestellar molecular clouds(星前分子雲)"として存在する」という記事を載せた。
・アメリカのタブロイド紙『ウイークリー・ワールド・ニュース』のニール・マクギネス編集長は、2013年のロシアの隕石落下現場にスターゼリーが発生したという出来事にちなんで「最新の研究では隕石や小惑星が生命の誕生に大きな役割を果たしていることが分かってきた。地球上の生物も宇宙から運ばれてきたアミノ酸や有機物が起源であるという説が主流になりつつある。つまり、スターゼリーは"生命の種"かもしれない」と語っているという

予備知識


・プランツボールや吸水ポリマーの見間違いの報告もある
・外見の似た粘菌のマンジュウドロホコリはメキシコのベラクルス州では「月の排泄物」と呼ばれている
・UFOに伴って発生するエンゼル・ヘアという物体との関連性が指摘されている
・2001年7~9月にかけてインド南部のケーララ州に降った赤い雨との関連性も指摘されている

エンゼル・グラス


珍奇ノート:スター・ゼリー ― 流星群の後に現れる謎の物体 ―

スターゼリーに似た物体として、エンゼル・グラス(天使の芝生)と呼ばれるものがある(同一のものかもしれない)。

しかし、こちらは空に舞った糸状の短い金属が絡みあって塊になったものであるとされ、流星群というよりもUFOや軍事兵器絡みのものとされている。

一説に軍用機がレーダー兵器対策として散布するチャフ(レーダーによる探知を妨害するもの)の一種であり、高高度に放たれた観測ロケットや気球のような兵器から発せられると言われているようだ。

資料


目撃情報


珍奇ノート:スター・ゼリー ― 流星群の後に現れる謎の物体 ―
2009年のスコットランドのもの
珍奇ノート:スター・ゼリー ― 流星群の後に現れる謎の物体 ―
丘の上に散らばる様子

・1846年11月、米国ニューヨーク州のロービルに直径1.2mの発光するゼリー状の塊が落下した
・1950年、米国ペンシルベニア州フィラデルフィアに直径1.83mの巨大なゼリー状の物体が落下した
・1979年8月、米国テキサス州フリスコにて、流星群の後に粘ついた紫色の塊が住民宅の庭に発生した
・1983年12月、米国のマサチューセッツ州ノースレディングに灰白色でオイリーなゼラチン状の物質が落下した
・1994年8月、米国ワシントン州オークビルにて流星群の後にゼリー状の雨が降ったと報告された
・1996年11月、豪州タスマニア州ホバート郊外にて流星群の後に白い半透明のスライムが現れたと報告された
・1997年、白い半透明のスライムが米国ワシントン州エベレット地区に発生した
・2009年秋、スコットランドの様々な丘で大量のゼリー状物質が発見された
・2011年10月、英国北西部の湖水地方であるアルズウォーター周辺の草原にてスターゼリーが発見された
・2013年2月、イギリスのハム・ウォール自然保護区にて、いくつかのスターゼリーのような物体が発見された
・2013年2月、ウラル地方チェリャビンスク州に巨大隕石落下現場でスターゼリーが発見された



1846年の目撃例(アメリカ)


米国の科学雑誌『サイエンティフィック・アメリカン』によれば、1846年11月11日にニューヨーク州のロービルにて直径4フィート(1.2メートル)と推定される発光物体が落ちてきた。これはゼリー状の塊で悪臭を放っていたがすぐに消えてしまったという。

1950年の目撃例(アメリカ)


1950年、ペンシルベニア州フィラデルフィアの4人の警官が空から飛来する謎の物体を観測した。彼らが落下現場に駆けつけると、そこには半球状でゼラチン質の物体が落ちていた。それは直径6フィート(1.83メートル)で、中央の厚さは1フィート(0.3メートル)、端が1~2インチ(2.5~5センチ)ほど出っ張っており、無臭だったが紫がかった霧を放っていた。

警官の一人が それを拾い上げようとするとネバネバしながら泡立った様子で溶けてしまい、手の中には棒状のカスが残ったという。なお、この事件は『ブロブ』というホラー映画の元ネタとなったといわれている。

1979年の目撃例(アメリカ)


1979年8月11日、テキサス州フリスコに住むシビル・クリスチャン夫人は、ペルセウス座流星群の後に自宅の庭にて、いくつかのネバネバとした紫色の塊を発見したと報告した。

この後、フォートワース科学歴史博物館の副所長の主導で追跡調査が行われた結果、町の外にあるバッテリーの再処理工場にて、バッテリーの鉛から不純物を除去するために苛性ソーダを使用する過程で紫色の化合物が生成されることが分かったと報告した。しかし、クリスチャン夫人の発見した芝生の塊はゼラチン状だったのに対し、再処理工場の化合物は固体であったため、この調査報告には懐疑的な見解が持たれているという。

1983年の目撃例(アメリカ)


1983年12月、マサチューセッツ州ノースレディングに落下した灰白色でオイリーなゼラチン状の物質が発見された。トーマス・グリンリー(Thomas Grinley)は、自宅の芝生の上、自宅前の歩道でこれを発見し、そのほかにもガソリンスタンドのポンプから滴り落ちる様子を見かけたと報告した。

1994年の目撃例(アメリカ)


1994年8月、ワシントン州オークビルにてペルセウス座流星群の後にゼリー状の雨が降ったと報告された。

この現象に遭遇したビバリー・ロバーツという人物は、庭の木の枝を覆っているゼリーを発見したと報告している。また、このゼリー状の物質に触った多くの人が激しいめまいなどを訴えて入院するという事態も起こったという。

このゼリー状の雨はオークビルに散発的に降り続けたとされるが、住民はこの雨が降るたびに何機もの黒いヘリコプターが上空を飛んでいるのを目撃したと主張しているため、ゼリー状の雨がこの黒いヘリコプターによって散布された有害物質ではないかと噂された。

なお、この雨のサンプルは回収されてマイク・マクドウェル博士に分析が依頼された。その分析の結果、博士は「サンプルから人体に有毒な物質を発生させる2種の生物を発見した」と述べたが、後にサンプルは研究室から消え去ってしまったという。

また、冷凍庫でサンプルを保管していた住人が、それを民間の研究施設に送って分析を依頼したところ、微生物学者のティム・デイヴィスはサンプルから真核細胞を見つけた報告した。

他の分析によればサンプルから人間の細胞が検出されたという情報もあり、詳しい原因は分かっていないものの、このゼリー状の雨は、軍の生物兵器、航空機から破棄されたし尿などの説が唱えられているという。

1996年の目撃例(オーストラリア)


1996年11月3日の夜、タスマニア州ホバート郊外にて流星が空を横切ってケンプトンの方まで流れていった。その翌朝、白い半透明のスライムを町の芝生や歩道で発見したと報告された。

1997年の目撃例(アメリカ)


1997年、白い半透明のスライムが米国ワシントン州エベレット地区に発生した。

2009年の目撃例(イギリス)


2009年秋、スコットランドの様々な丘で大量のゼリー状物質が発見された。この現象はBBCニュースでも報道された。

2011年の目撃例(イギリス)


2011年10月、イギリス北西部の湖水地方であるアルズウォーター周辺の草原にてスターゼリーが発見された。

2013年の目撃例(イギリス)


2013年2月、イギリスのハム・ウォール自然保護区にて、いくつかのスターゼリーのような物体が発見された。これらはカエルの卵であることが示唆されているが、相反する報告もあることから その物体は未だに特定されていないという。

2013年の目撃例(ロシア)


2013年2月、ウラル地方チェリャビンスク州に巨大隕石が落下したが、この現場でもスターゼリーが発見されたという。


スターゼリーに関する動画


 

左の動画は2009年スコットランドで発見されたもの。右の動画は不詳。

関連項目