チャルチウィトリクエ ― アステカ神話に登場する水の女神 ―

チャルチウィトリクエとは、アステカ神話に登場する水の女神のこと。
第四の太陽の時代の主神であり、治水や出産の守護神として信仰されていた。
基本情報
概要
チャルチウィトリクエは、アステカ神話における水の女神であり、河川や湖沼といった流れる水を司るとされる。その名はナワトル語で「翡翠のスカートを履いた者」を意味しており、翡翠が水や生命の象徴であったことから、水の神格としての性質を表している。雨の神トラロックとは対をなす関係であり、トラロックが「天から降る雨」のように垂直に落ちる水を司るのに対し、チャルチウィトリクエは「地上に満ちる水」のような水平に広がる水を司る。神話によって諸説あるが、この二神は夫婦、あるいは兄妹(姉弟)であるとされ、天と地の水の循環を司る二元的な神格として位置づけられている。
神話上のチャルチウィトリクエは、アステカ神話における五つの太陽の時代のうち、第四の太陽として「水の時代」を支配したとされる。伝承によれば、チャルチウィトリクエは非常に慈悲深く、自らが統治した世界を愛していたが、黒のテスカトリポカから「お前の慈愛は偽りであり、ただ称賛されたいだけだ」と辛辣な罵倒を受け、深く傷つき涙を流した。その涙は大洪水となって降り注ぎ、第四の太陽の世界を完全に沈めてしまったとされる。諸説では、この洪水は52年にわたって続いたともいわれている。このとき、生き残った人々は魚へと姿を変えて水中に逃げ込み、現在の魚類になったと伝えられている。この洪水は世界の終焉であると同時に、生命を浄化し、次なる第五の太陽(現世)へと繋ぐ通過儀礼としての側面も持っていると解釈されている。
このように、チャルチウィトリクエは農作物を潤す豊かな水の供給者である一方で、ひとたび荒れ狂えばすべてを呑み込む洪水の破壊者としての性格も併せ持っている。また、「出産」と「新生児の浄化」を司る女神でもあり、アステカ社会において子供が生まれると、助産師はチャルチウィトリクエに祈りを捧げながら赤子を水で洗ったとされている。この儀式は、産まれた子供から穢れを洗い流し、神々の保護下に置くための重要な手順とされていた。
アステカ社会において、チャルチウィトリクエは人々の生活に最も身近な自然神の一柱として深く崇拝された。特に湖上に築かれた都市テノチティトランや、水上農業(チナンパ)に依存していた地域にとって、チャルチウィトリクエの加護は国家の存亡に直結するものであった。メキシコ盆地のテスココ湖や周辺の泉ではチャルチウィトリクエに捧げる祭祀が盛んに行われ、水の恵みに対する感謝と、水難事故の回避が祈願された。テオティワカンの「月のピラミッド」の前で発見された巨大な石像は、伝統的にチャルチウィトリクエと同一視されてきたものであり、当地で水の神が最上の敬意を払われていたことを示す象徴的存在と考えられている。
データ
| 種 別 | 神仏 |
|---|---|
| 資 料 | 『フローレンティン写本』『テリェリアーノ・レメンシス写本』『ボルジア写本』など |
| 年 代 | 不明 |
| 備 考 |
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