蜃【シン】
珍奇ノート:蜃 ― 蜃気楼を作り出す伝説の生物 ―

蜃(しん)とは、蜃気楼を作り出す伝説の生物のこと。

古代の中国や日本に伝えられており、大蛤あるいは龍のような姿であったとされている。


基本情報


概要


蜃は蜃気楼を作り出す伝説の生物で、蜃の吹き出す氣が蜃気楼となって楼台や城郭を見せたといわれている。この蜃とされる生物には、龍のようなもの と 蛤のようなもの の2通りあり、中国や日本の資料には様々な説明が記されている。

龍のような蜃
珍奇ノート:蜃 ― 蜃気楼を作り出す伝説の生物 ―

龍のような姿だったとされる蜃は、中国の『潜確類書』や『本草綱目』に記されており、日本の『大和本草』や『和漢三才図会』がこれらを引用して説明しているが、資料によって多少の違いがある。

『本草綱目』によれば、龍のような蜃は、ヘビに似ていて大きく、角と紅のタテガミを持ち、腰より下の鱗はことごとく逆になっているという。また、ツバメを食い、よく氣を吐いて楼台や城郭を現すとされており、これが現れるのは雨が降る直前で、この氣は蜃楼または海市と呼ばれているという。また、この蜃の脂を蝋と混ぜて蝋燭にして火を灯すと、この火の中にヘビや楼閣の様子が浮かび上がるとされている。また『潜確類書』によれば、角の他に耳があるとされている。

『埤雅』によれば、正月にヘビとキジが交わって卵を生み、それが雷に撃たれて土に入ると数丈のヘビが生まれ、それから200~300年経つと天高く昇って蜃になるとされており、卵が土に入らなければただのキジとして生まれるとされている。

ちなみに『後西遊記』には この形の蜃が登場し、一行を飲み込んだとされている。

蛤のような蜃
珍奇ノート:蜃 ― 蜃気楼を作り出す伝説の生物 ―

蛤のような姿だったとされる蜃は、中国の『本草綱目』などに記されており、日本の『和漢三才図会』では これを引用して「車螯(シャゴウ / ワタリガイ)」として説明している。

『本草綱目』によれば、車螯とは大きな蛤のことで、その殻は紫色で玉のように光り輝いており、花のような斑点があるとされている。また、漁師らはこれを炙って食べるが、その味は蛤蜊(しおふき)に似ており、食感は硬いという。また、春夏には氣を吐いて楼台を作り出すため、この時期には島中に薄っすらと気が漂うのだという。

『和漢三才図会』では これに付加する形で、車螯の吐く氣は月夜の晩に漂って船人を惑わしたのだろうと説明している。また、この氣は晴れるのが遅ければ晴天となり、晴れるのが早ければ風雨になるといわれ、西の海では「渡の貝」、北の海では「狐のもりたつる」と呼ばれていたとされている。

また、鳥山石燕の『今昔百鬼拾遺』には「蜃気楼」という名で大蛤が氣を吹き出している様が描かれており「蜃とは大蛤のことであり、海上に気を吹いて楼閣・城市の形をなす。これは蜃気楼または海市といわれる」といった説明書が添えられている。恐らく日本では大蛤の蜃の方が知られており、『NARUTO』に登場する二代目水影の口寄せ獣のモチーフにもなっている。

データ


種 別 伝説の生物
資 料 『史記』『埤雅』『本草綱目』『和漢三才図会』
年 代 不明
備 考 龍とハマグリの2種類いるとされる