ミクトランテクートリ【Mictlantecuhtli】
珍奇ノート:ミクトランテクートリ ― アステカ神話に登場する冥府の王 ―

ミクトランテクートリとは、アステカ神話に登場する最上位の死神のこと。

冥府を統治する王であり、生死の循環や再生を司る存在とされている。


基本情報


概要


ミクトランテクートリは、アステカ神話における死の国「ミクトラン」を統治する王であり、最上位の死神として妻の女神ミクトランシワトルと共に、地底の最下層に鎮座しているとされる。その名はナワトル語で「ミクトランの主」を意味する。生と死は対立するものではなく循環するものと考えられていたため、ミクトランテクートリは単なる恐怖の対象ではなく、死者が還るべき場所を守る秩序ある世界の管理者として位置づけられている。

その姿は、不気味な骸骨あるいは肉が剥げ落ちた人間の姿で描かれることが多い。頭飾りにフクロウの羽、首には象徴的に目玉や頭蓋をつなげた首飾りを身につける。この外見は、死と生命の循環、死後世界の秩序を象徴しており、恐怖だけでなく再生を司る存在としての性格も表している。

神話上のミクトランテクートリは、現在の世界(第五の太陽)の創造において、ケツァルコアトルが人類再興のために過去の世界の犠牲者たちの「骨」を求めてミクトランへ降りた際、ミクトランテクートリは骨を渡す条件として法螺貝を吹きながら自身の周囲を四周する難題を与えた。ケツァルコアトルは何とか試練を突破したが、骨が折れてバラバラになったため、再生した人間の身長や形が多様になったといわれる。この物語は、死後に骨を返さねばならないというアステカの死生観を象徴している。

アステカ社会では、ミクトランテクートリは死への畏怖と敬意をもって崇拝された。ミクトランへ旅立つ死者の魂は、険しい道のりを進み、最下層でミクトランテクートリに手土産を差し出すことで永遠の安息を得られると信じられていた。暦(トナルポワリ)では「犬(イツクイントリ)」の日を司り、夜の13神の一柱としても数えられる。テンプル・マヨールの北側「鷲の家」からは実物大に近い土偶が発見され、肝臓を露出させ血を浴びた姿で刻まれており、下層世界と魂の結びつきを象徴している。こうした信仰は、死を受容し、宇宙の循環の一部として生を理解する精神的支柱となっていた。

データ


種 別 神仏
資 料 『フローレンティン写本』『テリェリアーノ・レメンシス写本』『ボルジア写本』など
年 代 不明
備 考 マヤ神話のア・プチと同一視される