エインガナ ― アボリジニに伝わる生命の創造主としての虹蛇 ―

エインガナとは、アーネムランド周辺のアボリジニに伝わる祖神のこと。
虹蛇の一種で、大地や生物させた万物の母として信仰されている。
基本情報
概要
エインガナは、北オーストラリアのアーネムランド周辺のアボリジニに伝わる蛇の姿をした祖神である。ドリームタイム(夢の時代)の創造神話に登場し、「万物の母」として大地や生き物の誕生に関わる存在とされる。また、北部オーストラリアに広く分布する虹蛇(レインボー・サーペント)の一種に位置づけられている。
エインガナは、すべての生命と物理的なつながりを持つ「生命の保持者」として語られる。エインガナは自らが生み出したすべての生き物と、目に見えない「腱(または生命の紐)」でつながっており、この腱を握っている限り、その生命は地上に留まることができるとされる。エインガナがその腱を放すことは、すなわち死を意味すると考えられている。この観念は、生命が自然の循環の中にあるというアボリジニの宇宙観を象徴するものとされる。
北部オーストラリアには、エインガナによる「生命の解放」を語る神話が伝えられており、概ね以下のような内容で語られる。
ドリームタイムの初め、世界には巨大な蛇の母なる存在エインガナがいた。エインガナは大きな水穴のそばに住み、その腹の中にはまだ生まれていないすべての生命――人間、動物、鳥、魚――が入っていた。しかし、エインガナには子を産むための出口がなかった。そのため生命は外へ出ることができず、エインガナは重く膨れた体を引きずりながら苦しんでいた。
そこへ祖神バライヤがやって来た。バライヤはどうすれば生命を外へ出せるかを考え、槍(サガイ)でエインガナの体の後方、肛門の近くを突いた。するとそこに穴が開き、血とともにエインガナの腹の中にいた生命が一斉に外へ流れ出した。
突然外の世界へ放り出された生き物たちは恐れて四方へ逃げた。そこへ祖神の犬であるディンゴが現れ、生き物たちを追い回した。逃げるうちに、飛び上がったものは鳥となり、水へ逃げたものは魚となり、地面を跳ねたものはカンガルーとなり、走ったものは他の獣となった。人間もまた四方へ散り、それぞれの土地に住み着いた。そのため部族と言葉が分かれたと語られている。
生命を解放したあと、バライヤは自分の姿を岩に描いたとされ、その後カワセミの姿に変わって飛び去ったとも語られる。その後もエインガナは大地を動き回り、その体の通った跡には川や水場ができたとされる。そしてエインガナは今もすべての生命と見えない腱のようなものでつながっており、そのつながりを手放すと命は終わると語られている。
そこへ祖神バライヤがやって来た。バライヤはどうすれば生命を外へ出せるかを考え、槍(サガイ)でエインガナの体の後方、肛門の近くを突いた。するとそこに穴が開き、血とともにエインガナの腹の中にいた生命が一斉に外へ流れ出した。
突然外の世界へ放り出された生き物たちは恐れて四方へ逃げた。そこへ祖神の犬であるディンゴが現れ、生き物たちを追い回した。逃げるうちに、飛び上がったものは鳥となり、水へ逃げたものは魚となり、地面を跳ねたものはカンガルーとなり、走ったものは他の獣となった。人間もまた四方へ散り、それぞれの土地に住み着いた。そのため部族と言葉が分かれたと語られている。
生命を解放したあと、バライヤは自分の姿を岩に描いたとされ、その後カワセミの姿に変わって飛び去ったとも語られる。その後もエインガナは大地を動き回り、その体の通った跡には川や水場ができたとされる。そしてエインガナは今もすべての生命と見えない腱のようなものでつながっており、そのつながりを手放すと命は終わると語られている。
この神話にはいくつかのバリエーションがあり、槍で穴を開ける場面の細部や、生き物たちが分かれる過程などに地域ごとの差異がある。しかし「穴を開けることで生命が世界に解き放たれる」という基本的な構造は共通している。また、エインガナが苦しみながら大地を這い回った跡は、現在の川や谷といった地形として残っていると考えられており、神話は土地の記憶と結びついたものとして理解されている。
エインガナと同系統の虹蛇
虹蛇にはエインガナと類似するものがあり、身体に生命を宿し、それを放出して人間や動植物を生み出すといった「創造神的な役割」を持つことが共通点になっている。この種別に該当する虹蛇は以下の通り。
ウォヌングル(Wonnungul)
ウォヌングルとは、オーストラリア北部の特定地域に伝わる虹蛇で、創造神的な性格を持つ存在である。ドリームタイムにおいて、身体に生命を宿し、それを放出して人間や動植物を生み出すとされる。また、眠っている間に地形や水穴を形成し、地域ごとの儀式や祝祭にも関わる存在とされる。
ウングッド(Ungud)
ウングッドとは、オーストラリア北西部キンバリー地方に伝わる虹蛇で、両性具有的な性格を持つ創造神的存在である。ドリームタイムにおいて、自らの抜け殻や卵から生命を生み出したとされる。また、水や土地の生成にも関わり、眠っている間に地形や水穴を作ったと伝えられる。
ウングル(Ungul)
ウングルとは、オーストラリア北西部やアーネムランド周辺に伝わる虹蛇で、創造神的な性格を持つ存在である。ドリームタイムにおいて、身体に生命を宿し、それを放出して人間や動植物を生み出すとされる。また、眠っている間に地形や水穴を形成すると伝えられ、地域ごとの儀式や祝祭にも関わる存在とされる。
クナパピ(Kunapipi)
クナパピとは、オーストラリア北部一帯に広く伝わる祖霊的存在で、「大いなる母」として崇められる母神的存在である。虹蛇と密接に結びつく存在とされ、地域によっては虹蛇そのもの、あるいは虹蛇と結びついた生命の源として語られる。ドリームタイムにおいて人間や動植物の生命をその胎内から生み出すとされ、豊穣や再生を象徴する存在として、北オーストラリアの大規模な宗教儀礼であるクナパピ儀礼の中心的象徴となっている。
データ
| 種 別 | 神仏、伝説の生物 |
|---|---|
| 資 料 | オーストラリアの岩壁画、樹皮画、口承伝承など |
| 年 代 | ドリームタイム(夢の時代) |
| 備 考 | 虹蛇の一種 |
スポンサーリンク
スポンサーリンク
|
|
コメント
0 件のコメント :
コメントを投稿