ヴクブ・カキシュ / ブクブ・カキシュ【Vucub Caquix】
珍奇ノート:ヴクブ・カキシュ ― マヤ神話に登場する鳥のような姿の巨人 ―

ヴクブ・カキシュとは、マヤ神話に登場する鳥の姿をした巨人のこと。

宝石のように輝く目と歯を持ち、自らを太陽であると称して地上を支配していたとされる。


基本情報


概要


珍奇ノート:ヴクブ・カキシュ ― マヤ神話に登場する鳥のような姿の巨人 ―
イサパ石碑2号
珍奇ノート:ヴクブ・カキシュ ― マヤ神話に登場する鳥のような姿の巨人 ―
イサパ石碑25号

ヴクブ・カキシュは、マヤ神話に登場する鳥の姿をした巨人であり、その名はキチェ語で「七羽のマコー(コンゴウインコ)」を意味している。完全な人類が創造以前の世界で、煌びやかな姿の自分を太陽や月であると誇示し、偽りの光によって地上を支配していたとされている。

『ポポル・ヴフ』によれば、ヴクブ・カキシュはナンセの樹の上に棲む怪鳥で、翡翠のように輝く目と、貴金属や宝石のように輝く歯を持っていたとされる。この時代は太陽が無く、世界は暗闇に包まれていた。ヴクブ・カキシュは輝く自身を光源とし、世界を照らす唯一の存在であると自称して、傲慢で虚栄に満ちた振る舞いをしていたという。

創造神の一柱であるフラカンは、このような地上の状態を憂いていた。そんな時、英雄双子と称されるフナフプーとイシュバランケーが現れ、ヴクブ・カキシュの支配に挑むことになる。ヴクブ・カキシュはナンスの実を食べる習慣があったので、双子はこれを利用しようとナンスの樹の下に潜んだ。ヴクブ・カキシュが実を食べに降りてきた瞬間を狙って吹き矢を放ち、その顎に命中させることに成功した。しかし、ヴクブ・カキシュは激しく抵抗し、フナフプーの片腕を引きちぎって逃げ去った。

その後、双子は老夫婦に変装し、歯の治療師を装ってヴクブ・カキシュのもとを訪れた。顎の痛みに苦しむヴクブ・カキシュに対し、双子は「歯を抜いて新しいものに替えましょう」と言って、宝石のような歯をすべて抜き取り、代わりに白いトウモロコシの粒に入れ替えた。さらに、彼の目を飾っていた輝きも取り除くと、ヴクブ・カキシュは輝きと権威を失って衰弱の末に命を落としたとされている。

なお、ヴクブ・カキシュには、二人の息子がいたとされる。長男はシパクナーというワニの姿をした巨人で、巨大な山を作り上げて移動させるほどの怪力を持っていた。次男はカブラカンという人の姿をした巨人で、足を地面に打つだけで山を崩す力を持っていた。両者ともに暴力的な力を誇示し、地上で暴れ回っていたが、英雄双子によって討たれ、地上から排除された。

こうした巨人に支配された地上の世界は、後に確立される宇宙秩序に先立つ「未完成な世界」の象徴と位置づけられている。また、英雄双子が暴力的な力を持つ巨人たちを知恵と策略で打ち破る物語は、力よりも知恵が優越するという価値観を示す説話として理解されている。

なお、メキシコのイサパ遺跡に残る「イサパ石碑2号」や「イサパ石碑25号」といったいくつかの石碑には、人面の怪鳥と人物が対峙する図像が刻まれており、16世紀に『ポポル・ヴフ』に記録されたヴクブ・カキシュの神話を連想させる石碑としてしばしば言及されている。だが、これらの図像がヴクブ・カキシュを直接描いたものであるかどうかについては、学術的に結論は出されていない。

データ


種 別 神仏
資 料 『ポポル・ヴフ』など
年 代 メソアメリカ神代
備 考 イサパ遺跡の図像に神話に似たものが存在する