フナフプーとイシュバランケー【Hunahpu & Xbalanque / Maya Hero Twins】
珍奇ノート:フナフプーとイシュバランケー ― マヤ神話に登場する双子の英雄 ―

フナフプーとイシュバランケーとは、マヤ神話に登場する双子の英雄のこと。

地上の巨人や冥界の王を討伐し、最終的に天に昇って太陽と月になったとされている。


基本情報


概要


珍奇ノート:フナフプーとイシュバランケー ― マヤ神話に登場する双子の英雄 ―
イサパ石碑2号
珍奇ノート:フナフプーとイシュバランケー ― マヤ神話に登場する双子の英雄 ―
イサパ石碑25号

フナフプーとイシュバランケーは、マヤ神話に登場する双子の英雄であり、知恵と勇気、そして再生の象徴とされている。キチェ・マヤ族の聖典『ポポル・ヴフ』における物語の大部分は双子の武勇伝に割かれており、地上の巨人や冥界の王たちを打ち破ることで、人類が地上に繁栄するための土壌を作る役割が描かれている。

神話上の双子は、父のフン・フナフプーの首と母のイシュキックとの間に神秘的な呪術の力によって宿った子とされる。そのため、物語の中ではたびたび呪術を使うことがあり、人間離れした生命力や超能力を発揮して苦難を乗り越えている。

双子の父フン・フナフプーは、知恵者として創造神に助言してきたイシュピヤコックとイシュムカネーの子であり、双子はその孫に当たる。父はその弟とともにポクトゥ(球戯)を愛し、日々これに没頭していた。その球の振動が地底の冥界シバルバーにまで響いていたため冥界の王の怒りを買い、冥界から使者が送られてきた。使者は冥界の球戯の試合に招待すると騙して冥界に招くと、冥界に向かった兄弟は王らの罠にかかって処刑された。

その際に、フン・フナフプーの首は瓢箪の木に晒されたが、不思議なことに無数の瓢箪が実り、その首を覆い隠したという。これを知った冥界の領主の娘イシュキックは好奇心に駆られて瓢箪の木に近づき、フン・フナフプーの首と対話した。その際に首は帰るように促したが、娘がそれでも居座ったため、首が娘の手に唾を吐きかけると、やがて娘は懐妊したとされる(処女懐胎のような形)。

冥界において、地上の者との子を授かることは禁忌とされていたため、イシュキックは冥界を追われることになった。そこで、追手に命乞いをすることで見逃され、やがて地上のイシュムカネーのもとに辿り着いた。そこでイシュキックは自分の子がフン・フナフプーの子であることを明かし、トウモロコシの儀式によって それを証明すると、イシュムカネーに受け入れられた。

やがて双子が生まれたが、父のフン・フナフプーには先妻との間に子がおり、家内では先に生まれた異母兄弟の方が地位が高かった。そのため、異母兄らから虐待を受けていたが、双子は知恵を駆使してそれを乗り越え、呪術で異母兄らを猿に変えて追い出し、家内での地位を確立した。

その後、双子は祖母のイシュムカネーが隠していたポクトゥの球を発見した。双子がこれで球戯をするとその振動は冥界に響き、亡き父と同様に冥界から使者が送られてきた。祖母は冥界の使者が双子を殺そうとしていると察知したため、双子の冥界行きを止めたが、双子は聞かずに冥界に向かうことを決意した。この際、双子は家の中央に2本のトウモロコシを植えて「このトウモロコシが育ち続ける間は自分たちが生きている証拠になる」と言い残して旅立った。

なお、その頃の地上は自らを神と称する傲慢な巨人族が支配しており、創造神の一柱であるフラカンはこの状況を憂いていたとされる。双子は冥界に向かう道中に、フラカンの意志を体現するかのように巨人と戦った。そして、ヴクブ・カキシュとその息子たち(シパクナーとカブラカン)を討伐した。この際の双子はいずれも巧みな知略を駆使して戦い、これはマヤ神話における知性の優位性を象徴すると解釈されている。

物語の最終章である冥界シバルバーへの潜入では、双子は父が命を落とした数々の試練をことごとく突破した。その際に、兄が首を撥ねられるという絶望的な状況に陥っても弟は諦めず、森や精霊の動物たちの助けを借りて兄の首を回収し、死の王たちを翻弄し続けた。最終的に自ら炎に飛び込み、一度死んで骨を川に流させた後に旅芸人の姿で蘇るという「死と再生」の儀式を経て、双子は冥界の王たちを一人残らず討伐し、父の無念を晴らした。

この勝利の後、双子は空へと昇り、兄のフナフプーは太陽となり、弟のイシュバランケーは月となったとされる。彼らが天に昇ったことで、世界には昼夜の巡りと光がもたらされた。この光の誕生こそが、その後に続くトウモロコシからの人類創造の必須条件であった。また、双子は人類の存続を可能にするための宇宙的秩序の守護者となったとされている。

こうした神話の内容から、マヤの宇宙観におけるフナフプーとイシュバランケーは、死を克服する「生命の循環」の象徴とされている。また、古典期マヤの統治者たちにとってその物語は信仰・政治的な象徴でもあり、メキシコ南部のイサパ遺跡の石碑やセロス遺跡の壁面装飾など、多数の遺物に英雄双子の姿や関連場面が描かれている。こうした表現は球戯を通じて冥界の主を欺く双子の物語が古代マヤ社会で重要視されていたことを示している。

データ


種 別 神仏
資 料 『ポポル・ヴフ』など
年 代 メソアメリカ神代
備 考