烏天狗 ― 鳥のような姿の天狗 ―

烏天狗は、鳥のような特徴を持つ天狗のこと。
顔にクチバシ、背中に翼を持つ姿で描かれることが多い。
小天狗や木葉天狗と同一視されることもある。
基本情報
概要
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烏天狗は、日本に伝わる天狗の一種で、鳥のような特徴を持つとされている。鳥のようなクチバシを持つ顔や、背中に翼を持つ姿で描かれることが多く、山伏のような姿で表されるほか、全身が羽毛に覆われた姿で描かれる場合もある。
『義経記』や『平治物語』などにある牛若丸伝承を題材とした能『鞍馬天狗』では、鞍馬山の大天狗(鞍馬天狗)が牛若丸に兵法を授け、その配下の木葉天狗が牛若丸の稽古相手となっている。後世には、この木葉天狗が烏天狗として描かれるようになった。
なお、鞍馬天狗が大天狗とされるのに対して、木葉天狗(烏天狗)は「小天狗」と呼ばれることもある。また、烏天狗を「青天狗」と呼ぶ例もあり、歌川国貞の『牛若鞍馬兵術励』では、顔の青い烏天狗が描かれている。さらに静岡県には「岩岳山は秋葉山の青天狗(烏天狗)が開いた」という伝承もある。
烏天狗は崇徳院と関連付けて描かれることもある。これは、崇徳院が天狗と結び付けられてきた伝承に由来するもので『保元物語』では崇徳院が生きながら天狗の姿になったとされ、『太平記』では天狗・魔縁の集団を率いる存在として描かれている。こうした崇徳院と天狗の関係を題材とした図絵には、曲亭馬琴『椿説弓張月』や歌川国芳『讃岐院眷属をして為朝をすくう図』などがある。
烏天狗は神仏として信仰されていることもある。主に、秋葉権現、飯縄権現、道了薩埵がこれにあたり、これらは烏天狗のような姿をしているとされる。なお、烏天狗は眷属とされることもあり、静岡県袋井市の可睡齋や、神奈川県鎌倉市の建長寺には、眷属としての烏天狗像が設置されている。
また、福井県の三方石観音には「お使いは烏天狗さん」とする伝承が残されている。さらに、富山県には烏天狗を屋敷神の名前とする例があり、「ハラの神」「ハッチョウの神」「ゴンゲンサマ」とも呼ばれるという。
烏天狗は、こうした信仰だけでなく、地域の伝承にも登場する。愛媛県の石鎚山には「山頂の祠の裏で小便をしていた子供の前に真っ黒い顔の大男が現れ、家まで送り届けたという話があり」これを烏天狗の仕業とする伝承が残されている。
烏天狗の骨やミイラが寺社の宝物として伝えられている例もある。
岩手県平泉町の中尊寺薬師堂には「カラス天狗の頭骨」が宝物として伝えられているが、後年の調査ではマイルカの頭骨であったとされる。
富山県の岩峅寺中道坊の個人宅にも「天狗様」と呼ばれる頭骨が伝えられているが、こちらはネズミイルカの頭骨である可能性が指摘されている。
なお、和歌山の御坊歴史民俗資料館には「烏天狗のミイラ」が保存されているが、これも後年の調査によって鳥の骨や粘土などを用いて作られた人工造形物と推定されている。
烏天狗は神仏として信仰されることもある。ただし、実際には烏天狗そのものを神仏として祀るというより、烏天狗の姿で表される神仏や、天狗と結び付いた人物が神格化された例が多い。
秋葉権現(あきばごんげん)とは、静岡県浜松市の秋葉山を信仰の中心とする火防の神で、火災除けや火難除けの信仰を集めている。秋葉権現信仰の社寺では「三尺坊大権現」として祀られていることが多い。
この「三尺坊大権現」は、修行を終えた際に烏形の翼が生えて烏天狗のような姿となり、最終的に迦楼羅身(カルラシン)へと変身するとされている。静岡県の秋葉総本殿・可睡斎には、白狐に乗る烏天狗形の三尺坊大権現が祀られているほか、境内には烏天狗像も設置されている。
飯縄権現(いづなごんげん)とは、長野県の飯縄山を信仰の中心とする神仏習合の神で、武運長久や戦勝、火防などの信仰を集めている。飯縄権現を祀る寺社では、剣と羂索を持ち、白狐に乗った烏天狗の姿で表されることが多い。
この「飯縄権現」は中世から天狗と結び付けられており、『戸隠山顕光寺流記并序』では飯縄大明神が「日本第三の天狗」と名乗ったとされる。また『飯縄山廻祭文』では、天竺の智羅天狗が飯縄大明神になったとされている。さらに、飯縄権現には迦楼羅天など複数の神仏が習合しているとされる。
道了薩埵(どうりょうさった)とは、神奈川県南足柄市の最乗寺で祀られている守護神で、寺院や山を守護する天狗として信仰されている。道了薩埵は、最乗寺の開山である了庵慧明禅師の弟子・道了尊者に由来する。
この「道了薩埵」は最乗寺の建立を助けた後、了庵慧明禅師が亡くなると寺を永く守護するために天狗の姿へと化身し、山中へ飛び去ったとされている。その後、最乗寺の守護神として祀られるようになり、境内には大小さまざまな天狗像や、天狗の下駄を模した奉納物が置かれている。
データ
| 種 別 | 妖怪、UMA、伝説の生物 |
|---|---|
| 資 料 | 能『鞍馬天狗』『椿説弓張月』ほか |
| 伝承地 | 日本の全国各地 |
| 年 代 | 古代 |
| 備 考 | 鳥頭系の天狗を指す呼称と思われる |
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