天の牡牛 ― 古代メソポタミア神話に登場する天上の獣 ―

天の牡牛(てんのおうし)とは、古代メソポタミアの神話や伝承に登場する獣のこと。
女神イシュタルがギルガメシュへの報復のために地上に送り込んだとされる。
基本情報
概要
天の牡牛は、古代メソポタミアの神話や伝承に登場する獣であり、女神イナンナ(イシュタル)によって地上に送り込まれ、ギルガメシュとエンキドゥに討たれた存在とされている。シュメール語では「グガランナ(Gugalanna)」とも呼ばれる。
『ギルガメシュ叙事詩』第6の書板には、女神イシュタルがギルガメシュに求愛する場面がある。ギルガメシュは求愛を拒絶し、イシュタルが過去に愛した者たちの悲惨な運命を挙げて非難した。
これに怒ったイシュタルは、父神アヌのもとへ赴き、天の牡牛を要求する。アヌは、天の牡牛が地上に放たれればウルクに大きな被害をもたらすことを懸念するが、最終的にはイシュタルに天の牡牛を与える。
天の牡牛がウルクに送り込まれると、大地や河川に被害をもたらし、人々を脅かした。しかし、ギルガメシュとエンキドゥは協力して天の牡牛と戦い、これを倒す。戦いの後、イシュタルは二人を呪うが、エンキドゥは天の牡牛の一部を女神に投げつけて侮辱した。
また、ギルガメシュは天の牡牛の角を加工して油を入れる容器とし、上質な油を自身の神ルガルバンダに捧げた。こうしてギルガメシュとエンキドゥは強大な敵である天の牡牛を倒したが、二人の行いは神々の怒りを招くことになる。
その後、神々は二人の行いについて協議し、エンキドゥに死を与えることを決定する。エンキドゥの死は、ギルガメシュが自らの死と人間の運命に向き合い、不死を求めて旅立つきっかけとなった。
シュメール語の『ギルガメシュと天の牡牛』でも、女神イナンナが天の牡牛を要求し、これを地上に送り込む物語が描かれている。現存する本文は複数の断片から構成され、欠損部分も多いため、全容を明らかにすることは難しい。
この物語では、イナンナが父神アヌに天の牡牛を要求し、最終的にこれを地上へ連れてくる。天の牡牛はウルクの草地を荒らし、河川の水を飲み干すなど、周囲に大きな被害をもたらす。別の断片には、ギルガメシュとエンキドゥが天の牡牛と戦う場面が記されており、ギルガメシュがその頭蓋骨を斧で打ち、倒す様子が描かれている。
天の牡牛の死後、その皮は街路に、内臓は広場に置かれ、肉はウルクの人々に分け与えられた。また、ギルガメシュは二本の角を、女神イナンナに捧げる上質な油を注ぐ容器に作り替えたとされる。作品の末尾では、天の牡牛の死に関連してイナンナを称える言葉が記されている(なお、『ギルガメシュ叙事詩』の同じ場面では、ギルガメシュは天の牡牛の角を加工して油を入れる容器とし、上質な油を自身の神ルガルバンダに捧げている)。
このように天の牡牛は、ギルガメシュとエンキドゥの武勇を示す敵対者であると同時に、二人の行いが神々との対立を招き、エンキドゥの死へとつながる物語上の重要な存在となっている。
なお、シュメール語版には、天の牡牛が太陽の昇る地平線で草を食む描写があり、これをもとに、牡牛の神話とおうし座の出現との関係を考察している研究者もいる。この天文学的な解釈には研究上の根拠が示されているものの、神話の成立意図まで確定しているわけではない。
・ギルガメシュ叙事詩(Epic of Gilgamesh)
・ギルガメシュと天の牡牛(Gilgamesh and the Bull of Heaven)
データ
| 種 別 | 伝説の生物 |
|---|---|
| 資 料 | 『ギルガメシュ叙事詩』、『ギルガメシュと天の牡牛』 |
| 年 代 | 古代メソポタミア |
| 備 考 | シュメール語では「グガランナ(Gugalanna)」と呼ばれる |
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