キノケファリ ― 犬の頭を持つ伝説的な人種 ―

キノケファリとは、インドやアフリカにいると伝えられる犬頭人間のこと。
言葉ではなく鳴き声で意思疎通を行い、狩猟をして生肉を食べるといわれている。
基本情報
概要
キノケファリは、頭部が犬で体が人間という姿をした種族である。古代から中世にかけて西洋世界で語られてきた伝説的な人種で、名称はギリシャ語の「キュノス(犬)」と「ケファレー(頭)」に由来する。すなわち、キノケファリとは「犬頭人間」を意味する言葉である。
人間と違って、頭部が犬の形をしており、人の言葉ではなく吠えるような声で意思疎通を行うとされている。また、嗅覚が非常に優れているともいわれ、外見だけでなく感覚や行動面でも獣に近い特徴を持つ存在として描かれてきた。
生活様式については、狩猟を中心とした暮らしを送り、獲物の肉を生のまま、あるいは簡単に乾かした程度で食べるとされる。農耕や調理といった文明的な文化を持たない未開の民と見なされ、衣服をほとんど身につけず、集団で行動する点も特徴とされている。
キノケファリの存在は古くから知られており、古代ギリシャ・ローマ時代の地理書や博物誌では「世界の果て」や「文明圏の外側」に住む異民族として記述されてきた。プリニウスやメガステネスといった著述家は「インドやアフリカの遠方地域に犬の頭を持ち、吠えることで意思疎通を行う人々がいる」と記している。また、中世にはマルコ・ポーロが『東方見聞録』の中で「インド洋周辺の島々に、顔が犬のようで凶暴な性質を持つ人々が住んでいる」と記している。
中世ヨーロッパではキノケファリは単なる怪物ではなく、異教徒、未開の民、人間と獣の中間的存在、として理解されるようになった。そのため、一部のキリスト教文献では「彼らも魂を持つ存在であり、改宗の対象になり得る」と考えられるようになり、実際に聖クリストフォロスを犬頭で描いた図像が残されている。
ちなみに、中国の神話や文献にも犬頭人間が登場することはあるが、キノケファリはあくまで西洋世界の文献体系の中で形成された概念である。そのため、外見上の共通点はあっても、同じ存在や系譜にあるものとは言えない。
キノケファリの正体についてはいまだに明らかになっておらず、その実在を示す証拠も確認されていない。現在では、地理的な誤認、異民族に対する誇張、未知の文化への恐怖、猿人や野生民族の誤解釈、などが重なって生まれた想像上の存在であると考えられている。
データ
| 種 別 | 伝説の人種 |
|---|---|
| 資 料 | 『博物誌』『東方見聞録』ほか |
| 年 代 | 1世紀ごろ? |
| 備 考 | 中国文献にも似たような人種の記録がある |
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