ペクヨン【백룡 / 白龍 / Baekryong】
珍奇ノート:ペクヨン ― 朝鮮半島に伝わる白龍の神 ―

ペクヨン(白龍)とは、朝鮮半島の神話や民間信仰に登場する龍神のこと。

白あるいは銀色の鱗を持つ龍で、家門に繁栄と吉兆をもたらす龍神として信仰されている。


基本情報


概要


白龍(ペクヨン)は、朝鮮半島の神話や民間信仰に登場する神聖な龍神である。西方を守護する白龍であり、四神体系においては白虎に相当する。白は伝統的に純潔や神聖を象徴する色とされるため、白龍は浄化や正統性を象徴する存在として解釈されることがある。

15世紀の朝鮮王朝初期に編纂された『龍飛御天歌(ヨンビオチョンガ)』には、以下のような王朝の始祖伝説に関わる重要な神話が記されている。

まだ朝鮮に王朝が存在せず、世界の秩序が定まっていなかった頃、その地の水と空には一匹の白龍(ペクヨン)と、それに対する悪なる黒龍(フンニョン)がいた。本来、清らかな力を持つ白龍であったが、強大な黒龍の猛威に圧倒され、ついには支配権を奪われ追い詰められた。自らの力のみでは運命を覆せぬと悟った白龍は、天に選ばれし徳を持つ人間、度祖(ドジョ)※のもとを訪れた。

白龍は度祖に対して「私は今、黒龍に追い詰められ、滅びを目前にしている。どうか私を助けてほしい」と静かに語りかけた。龍が人に救いを求めるのは極めて異例の事態であったが、度祖はこれを恐れず快諾した。やがて度祖は黒龍と対峙し、猛威を振るう黒龍をその剛勇をもって撃ち、その命を絶った。こうして黒龍は滅び、白龍は救われたのである。

危機を脱した白龍は度祖の前に現れ、深い感謝と共に「あなたの助けによって私は滅びを免れた。この恩は決して忘れない」と告げた。さらに白龍は、未来の告知として「あなたの子孫の中から、必ず天命を受け、王となる者が現れるであろう」という予言を残し、静かに姿を消した。その後、時代が下り、度祖の血脈から李成桂(イ・ソンゲ)が現れ、朝鮮王朝を建国するに至った。

※度祖:後に朝鮮王朝を建てる李成桂の祖父にあたる李椿(イ・チュン)のこと

この伝説により、白龍は単なる自然霊ではなく、王朝の成立を予言し、その正統性を示す天命の象徴として位置づけられた。

思想的背景において、白は純潔や潔白の象徴とされ、邪気を払い秩序を回復する力を持つ色と考えられてきた。そのため、白龍もまた混乱を終わらせ新たな秩序の成立を予兆する神聖な存在として解釈されており、現代でも信仰や伝承の中にその名が残されている。

民間信仰(巫俗)におけるペクヨンは、水域を司る龍神の一種として崇められている。特に西方の水辺を守護する存在とされ、漁師の安全や村の豊作を祈願する対象となってきた。また、白龍は「浄化」の力が強いと信じられており、病を払う儀式や家門の繁栄を願う特別な祭祀においてその名が使われている。

データ


種 別 神仏、伝説の生物
資 料 『龍飛御天歌』など
年 代 不明
備 考 朝鮮王朝の起源神話に登場する