虯龍(キュウリュウ) ― 中国に伝わる角のある龍 ―

虯龍(きょうりゅう)とは、中国に伝わる龍の一種のこと。
角を持つ龍のことであり、龍の成長過程の段階の一つであるとされている。
基本情報
概要
虯龍は中国に伝わる龍の一種で、角を持つ龍を指す名称である。虯龍に関する最も古い記述は戦国時代(紀元前4〜3世紀)の『楚辞』に見られ、天を駆けて神仙を天界へと運ぶ存在として描かれている。また、『淮南子』においても、嵐に乗って天に駆け登ると表現されており、これらの記述から古くから天界と結び付けられた霊獣として認識されていたことがわかる。さらに『揚子法言』では「虯龍も水を失えば小さな虫に制せられる」と述べられ、水と結び付いた霊獣であると同時に、水を失うことで力を失う存在であることが象徴的に語られている。
生物としての特徴については、『説文解字』で「虯とは龍の子で角のあるもの」と定義されており、『広雅』にも「角のある龍を虯龍という」と説明されていることから、角の有無が虯龍の主要な特徴として認識されていたことがうかがえる。また『述異記』では「水虺が蛟となり、やがて龍、角龍を経て、最終的に応龍に至る」という変化過程が記されており、角竜すなわち虯龍が龍の成長過程における一段階として捉えられていたことが示唆されている。さらに『本草綱目』では、過去の文献を引用して蛟龍・応龍・螭龍と並ぶ龍類の一型として虯龍を位置づけている。
体色は青や翠、あるいは白で表現されることが多く、青虬は春や東方を象徴し、素虬や玉虬といった白い虯は高潔さや天界を象徴するとされる。また、盤虬という言葉は「とぐろを巻いた虯」を意味しており、力を蓄えて潜伏している状態を指す。転じて「才能を隠し持っている若者」や「隠れた英雄」の比喩としても使われるようになったとされている。なお、平安時代の辞書『新撰字鏡』においては「虯は黒い体で鱗や甲がない龍であり、螭は黄色いものである」と記されている。
!角がない龍とされるケースについて
『楚辞』離騒の王逸注には「角のあるものを龍といい、角のないものを虯という」とあり、『淮南子』覧冥訓の高誘注にも同様に「角があるものを龍といい、角がないものを虯という」と記されている。また、『龍龕手鑑』でも「虬とは角のない龍である」と説明されていることから、虯龍は「角のない龍」として解釈されることがある。
日本においては、平安時代の辞典『和名類聚抄』が『文字集略』を引用して虯を「角がない龍」と説明したことが、後世の定義に大きな影響を与えたと考えられる。『文字集略』の原文は現存しないため直接の確認はできないが、後代の引用には「角がない龍」とするものと「角がある龍」とするものの両方が存在している。江戸時代の『箋注倭名類聚抄』では『和名抄』の記述を踏まえつつ、諸文献を検討した上で「いまだ、どちらが正しい説であるかを知ることはできない」と結論づけている。
明治時代の『古事類苑』では、『和名類聚抄』の虯の引用文について、原本とは異なり「角がある龍」と校訂した本文を採用しており、あわせて関連文献を引いて二説を検証している。そのうえで、「角があるという説と、角がないという説の二つは古くから並存しており、どちらが正しいかは断定できない」としている。
しかし、同系統の龍である螭龍が「角のない龍」と明確に定義されていることから、虯龍については「角がある龍」と解釈する方が体系的には整合的であると考えられる。そのため、本記事では虯龍を「角がある龍」として扱うことにする。
| 種 別 | 神仏、伝説の生物 |
|---|---|
| 資 料 | 『楚辞』『広雅』『本草綱目』ほか |
| 年 代 | 不明(紀元前) |
| 備 考 | 角のある龍であるとされている |
スポンサーリンク
スポンサーリンク
|
|
コメント
0 件のコメント :
コメントを投稿