アイド・ウェド / アイダ・ウェド【Aido Hwedo / Ayida-Weddo】
珍奇ノート:アイド・ウェド ― 西アフリカに伝わる虹蛇 ―

アイド・ウェドとは、西アフリカのフォン族の神話に登場する大蛇のこと。

フォン族の神話では、創造神マウ=リサの創世神話において世界の形成を助けた存在とされている。

ハイチ・ヴードゥーにおける虹の女神アイダ・ウェドと同一視されている。


基本情報


概要


アイド・ウェドは、西アフリカのベナン周辺に住むフォン族の神話に登場する大蛇で、創造神であるマウ=リサの創世神話において世界の形成を助けた存在とされる。大地の起伏や山々は、この蛇が地上を進む際に生じたものであり、世界が完成した後は海の底に身を横たえ、自らの身体をとぐろ状に巻くことで大地を支え続けていると伝えられている。

その身体は天と地をつなぐほど長大で、虹と結びつく存在とされている。そのため、空にかかる虹はアイド・ウェドの姿が天に現れたものだと解釈されることもある。こうした特徴から、アイド・ウェドは天と地を結ぶ虹蛇、あるいは世界の秩序を支える宇宙的な蛇として理解されることもある。

なお、アイド・ウェドは熱を嫌うため、その身体を冷やして休ませるために創造神が海を作ったとされている。現在もこの蛇は世界の下で眠りながら大地を支えており、もし身体を動かせば地上では地震などの災害が起こると信じられている。

また、この大蛇の観念は大西洋奴隷貿易を通じてカリブ海地域へと伝わり、やがてハイチ・ヴードゥーにおける虹の女神アイダ・ウェドの信仰と結びついたと考えられている。これにより、西アフリカの宇宙蛇の神話は、虹や雨、豊穣を司る精霊信仰へと発展していったとされている。

アイド・ウェド(フォン族に伝わる創造神話の虹蛇)
珍奇ノート:アイド・ウェド ― 西アフリカに伝わる虹蛇 ―

アイド・ウェドはフォン族の伝統宗教において、世界を支える大蛇として原初的な存在の一つとして語られてきた。フォン族の宗教では、創造神であるマウ=リサを中心とする神々の体系があり、アイド・ウェドはその創世の働きに関わる存在として位置づけられている。

なお、当地には以下のような神話が伝えられている。

はじめ、世界にはまだ大地も山も川もなく、ただ神々の力だけが存在していた。創造の女神マウ=リサは世界を形作るため、巨大な蛇を伴った。その蛇こそが虹の蛇アイド・ウェドであった。

アイド・ウェドはあまりにも巨大で、その身体は天と地をつなぐほど長かった。女神はその口の中、あるいは背の上に乗って、まだ形のない世界を旅した。

蛇が大地の上をくねりながら進むと、その動きによって大地には起伏が生まれた。蛇の身体が曲がるところでは丘や谷ができ、休んだ場所には山が生まれた。そして、蛇が吐き出したものや残したものは、やがて地中に埋まり、金属や宝石となった。こうして山、森、動物、川が作られ、世界は豊かな姿になった。

しかし、女神は心配になった。世界はあまりにも多くのものを抱え、重くなりすぎていたからである。そこで女神はアイド・ウェドに言った。

「この世界を支えてほしい。おまえの身体で大地を支えれば、世界は崩れないだろう。」

蛇はそれを受け入れ、大地の下へ潜り、自分の体をぐるりと巻きつけ、尾を自分の口にくわえた。こうして蛇は世界の下でとぐろを巻き、大地を支える柱となった。しかし、アイド・ウェドは熱を嫌う生き物であった。そこで女神は海を作り、蛇がその冷たい水の中で休めるようにした。

それ以来、蛇は世界の下で眠りながら大地を支え続けている。だが、ときどき蛇が体を動かすと、地上では地震などが起こる。

そして、言い伝えによれば、もし世界の地下にある鉄をすべて食べ尽くしてしまえば、蛇はついに自分の尾を食べ始めるという。その尾がなくなったとき、世界は海へ崩れ落ち、終わりを迎えるとされている。

この神話では、アイド・ウェドは世界の地形を作り出した存在であると同時に、大地を支える宇宙的な存在として描かれている。山や谷が蛇の動きによって生まれたとする説明は、自然の地形を神話的に解釈したものと考えられている。また、蛇が海の中で世界を支えているという観念は、世界の安定を保つ基盤としての存在を象徴している。

さらに、地下の鉄を食べ尽くすと世界が終わるという伝承は、宇宙の終末を説明する要素として語られることがある。このようにアイド・ウェドは、世界の創造・維持・終末という三つの側面に関わる存在として、フォン族の宇宙観を象徴する重要な蛇神とされている。

アイダ・ウェド(ハイチ・ヴードゥーで信仰される虹の女神)
珍奇ノート:アイド・ウェド ― 西アフリカに伝わる虹蛇 ―

アイダ・ウェドは、カリブ海地域のハイチの宗教であるハイチ・ヴードゥーで信仰されている虹の女神であり、蛇の姿をとる精霊(ロア)の一柱である。古い蛇神であるダンバラの妻または対となる存在とされ、虹・雨・水・豊穣と結びついた存在として信仰されている。

その姿はしばしば虹の蛇として描かれ、天空に弧を描く虹はアイダ・ウェドの身体が空に現れた姿であると解釈されることがある。ダンバラが原初の秩序や霊的な世界を象徴する存在であるのに対し、アイダ・ウェドはその力を地上へもたらす存在とされ、天と地を結びつける役割を担うと考えられている。また、水や雨と関わる存在であることから、生命や繁栄をもたらす女神として崇拝されることも多い。

なお、当地には以下のような神話が伝えられている。

はじめ、世界がまだ形を持たない頃、古い蛇の精霊が存在していた。その蛇はダンバラと呼ばれ、原初の世界を支える存在であった。やがて空に虹が現れ、その虹からもう一匹の蛇が生まれた。それが虹の蛇アイダ・ウェドである。

アイダ・ウェドはダンバラと結ばれ、二匹の蛇は互いに絡み合うことで天と地を結びつけた。ダンバラは大地の下で世界を支える存在となり、アイダ・ウェドは虹となって天空に弧を描き、雨や生命を地上にもたらす役割を担うようになった。

雨が降ったあとに虹が現れるのは、アイダ・ウェドが空を渡り、再びダンバラと結びつこうとしている姿であるとも語られている。こうして二匹の蛇は、世界の調和と生命の循環を支える存在として崇拝されるようになった。

この神話では、アイダ・ウェドは虹を司る存在として描かれると同時に、ダンバラと対になる存在として宇宙の調和を象徴している。虹が天と地を結ぶ弧として現れることから、アイダ・ウェドは神々の世界と人間の世界をつなぐ橋のような存在として理解されることがある。

また、雨の後に虹が現れるという自然現象は、ダンバラとアイダ・ウェドの結びつきを象徴的に示すものとして解釈されることもある。このようにアイダ・ウェドは、雨や水を通じて生命をもたらす存在であると同時に、世界の調和や豊穣を象徴する女神として、ハイチ・ヴードゥーの信仰体系の中で重要な役割を担う蛇神とされている。

データ


種 別 神仏、伝説の生物
資 料 フォン族の口伝、『Dahomey: An Ancient West African Kingdom』など
年 代 不明
備 考 虹蛇の一種