リンドブルム ― 欧州に伝わる二本脚で這う蛇のような竜 ―

リンドブルムとは、ドイツや北欧の伝承に登場する竜の一種のこと。
蛇のような長い胴体と二本の脚を持つことが主な特徴とされている。
基本情報
概要
リンドブルムは、ドイツや北欧の伝承に登場する竜の一種であり、蛇のような長い胴体と二本の脚を持つことが主な特徴とされている。翼の有無については、伝承や地域によって異なり、北欧のドイツ語圏では「翼のない二本脚の蛇体」とされるのに対し、中欧のオーストリアの図像では「翼を持つ二本脚の蛇体」とされるケースも存在する。いずれにせよ、ゲルマン系文化圏において古くから知られた竜の姿の一つとされている。
その姿は、巨大な蛇の身体、鋭い牙を持つ頭部、そして身体の前方に位置する一対の脚を備えたものとされ、尾は非常に長く、獲物を締め上げるのに適した形状をしている。中世以降、ドイツやオーストリアの紋章や彫刻などにも広く用いられており、図像においては口から毒気を吐く姿や、鱗に覆われた重厚な身体が描かれることもある。
伝承においては、人里離れた湿地や洞窟、あるいは宝を守る守護者として語られ、家畜を襲い、その息で草木を枯らす毒を持つ存在として恐れられていた。特にゲルマン神話や民話においては、英雄が試練を乗り越える際の象徴的な障壁として登場し、策略や忍耐によって退治されたり、呪いを解かれたりする存在として描かれている。飛翔するドラゴンやワイバーンが空の脅威として扱われるのに対し、リンドブルムはより大地に根ざした、執念深くおぞましい存在として区別されることが多い。
オーストリア南部のクラーゲンフルトには、中世の頃にリンドブルムが湿地に棲み着いて人畜に害を与えていたという伝承がある。このリンドブルムは、時の公卿によって発布された「怪物を倒した者に領地と自由を与える」という条件のもとに集った若者たちによって討伐されたと伝えられている。この伝承は町の起源として記録され、その伝承は現在まで語り継がれており、クラーゲンフルトの新広場には巨大なリンドブルムの石像が据えられている。
また、北欧の民話ではリンドブルムの姿で誕生した「リンドブルム王子」という物語があり、後に王妃となる娘の愛によって呪いを解かれ、人間の姿に戻るという内容となっている。このようにリンドブルムにまつわる主な伝承は、地域ごとに異なる姿で語り継がれており、後世の文学や芸術にも影響を与えてきた存在とされている。
データ
| 種 別 | 伝説の生物 |
|---|---|
| 資 料 | 北欧・中欧の民話や伝承など |
| 年 代 | 中世 |
| 備 考 | 大蛇型で二本脚(前脚)を持つ形の竜 |
リンドブルムの伝承
クラーゲンフルトのリンドブルム
中世頃、オーストリア南部のクラーゲンフルト近郊には、霧に包まれた広大な湿地が広がり、そこには恐ろしい「リンドブルム」が棲みついていた。
その怪物は巨大な蛇のような胴体に二本の脚を持つ姿をしており、湿地を横切る家畜をさらい、人々に死の恐怖を植え付けたと伝えられている。多くの者がこの怪物を恐れて土地を離れ、湿地は荒廃の一途を辿っていたという。
この苦境を救うべく、時の公爵はリンドブルムを退治した者に領地と自由を与えるという布告を出した。これに応じた勇敢な者たちは、怪物の習性を観察し、正面から戦うのではなく「餌」を使った計略を立てた。
彼らは頑丈な鎖の先に鋭い鉄の鉤(かぎ)を取り付け、そこに囮となる雄牛を括り付けて怪物の巣穴の近くに置いた。激しい水音と共に現れたリンドブルムが、その雄牛を丸呑みにした瞬間、彼らは一斉に鎖を引き絞った。喉に鉤が突き刺さった怪物は、悶え苦しみながらもついに力尽き、討ち取られたのである。
怪物を退治した後、彼らは布告通りに自由と土地を授かり、かつての湿地は切り拓かれて街は発展の契機を得たと伝えられている。この勝利の功績は街の誇りとなり、今も街の中央広場には、口を開け鎖に繋がれたリンドブルムの巨大な石像が、街の起源を物語る記念物として鎮座している。
『リンドブルム王子』の物語
中世、北欧のある国には、世継ぎに恵まれぬ王妃がいた。王妃はやがて助言に従って子を授かったが、生まれてきたのは二人の子であり、そのうち一人はもう一人は人の王子であったのに対し、もう一人は巨大な蛇のような胴体に二本の脚を持つ、恐ろしい姿の「リンドブルム」であった。
やがて成長した王子が結婚を望んだとき、「先にリンドブルムを結婚させねばならぬ」という不吉な定めが明らかとなり、王宮は深い苦悩に包まれた。かくしてリンドブルムは花嫁を求めることとなり、多くの娘たちが妃として差し出されたが、初夜のたびに恐怖して姿を消してしまったという。
この絶望的な状況を救うべく、賢い羊飼いの娘が名乗りを上げた。この娘は森に住む老婆から授かった助言に従い、王子との初夜に「ある条件」を提示する計画を立てた。娘はリンドブルムに対し、「私が一枚ずつ衣を脱ぐごとに、あなたもその皮を一枚ずつ脱ぎ捨ててください」と求めたのである。
王子がその言葉に従い、何枚もの鱗に覆われた皮を脱ぎ捨てていくと、やがてその下からは弱々しい肉体が現れた。その瞬間、娘は用意していた灰を混ぜたミルクで王子の体を洗い清め、恐れることなく優しく抱きしめた。
怪物の皮をすべて脱ぎ捨てた後、リンドブルムは激しい苦しみの末に呪いが解け、美しい人間の王子へと姿を変えたと伝えられている。こうして呪いは完全に解かれ、娘は王子の正妃となり、その知恵と勇気は国中に讃えられた。そして、二人は正式に結ばれて国を継ぎ、長く穏やかに暮らしたという。
この物語は、恐るべき呪いであっても知恵と忍耐によって乗り越えられることを示すものとして、北欧各地で語り継がれている。
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