ヴィマーナ / ヴィマナ【Vimana】
珍奇ノート:ヴィマーナ ― インド神話に登場する空飛ぶ乗物 ―

ヴィマーナとは、古代インドの文献に登場する天空の乗物や空中の宮殿のこと。

文献によって描写は異なるが、空を飛ぶ宮殿「プシュパカ・ヴィマーナ」が特に有名である。


基本情報


概要


ヴィマーナ(Vimana)は、古代インドの文献に登場する天空の乗物や空中の宮殿のことを指す。文献によってその意味は異なり、神々や英雄たちが天空を移動するための乗物を指す場合もあれば、神々の住まう宮殿や天空の建造物を意味する場合もある。なお、ヴィマーナという名称はサンスクリット語の「vimāna(विमान)」に由来する言葉で、字義的には「計り分けられたもの」を意味している。

ヴィマーナに関する最も有名な記述は、ヒンドゥー教の叙事詩『ラーマーヤナ』に登場する「プシュパカ・ヴィマーナ」である。これは空を飛ぶ宮殿のような存在として描かれ、乗員の望む場所へ向かう性質を持つ乗物とされている。また、『マハーバーラタ』にも神々や英雄たちが天空を移動する乗物が登場し、地上と天界を往来する神秘的な存在として語られている。

さらに、より古いヴェーダ文献には、太陽神スーリヤや雷神インドラなどが天空を駆ける戦車の描写が見られる。これらはヴィマーナとは呼ばれていないが、神々が天空を移動するという発想が後世のヴィマーナ概念との共通点を持つことから、その原型として位置付けられることがある。その一方で、ジャイナ教文献では「ヴィマーナは神々の住まう壮麗な天空宮殿」として描かれており、乗物というよりも天界の建造物としての性格が強い。

このように、ヴィマーナは単一の飛行体を指す言葉ではなく、時代や文献によって意味や役割が異なる概念である。しかし共通しているのは、いずれも人間界の常識を超えた天空の領域と深く結び付けられている点にある。このため、近代以降には古代宇宙飛行士説やUFO関連の議論の中で取り上げられるようになり、「古代インドの航空機」として紹介されるようになった。

特に20世紀初頭に知られるようになった『ヴィマニカ・シャーストラ』は、ヴィマーナの構造や操縦法を記した文書として有名であるが、これは古代の原典ではなく近代に成立したものと考えられており、航空工学的な検証でも実用性は認められていない。その一方で、ヴィマーナは現在でも神話・オカルト・SF作品など様々な分野で語り継がれており、古代インド神話を代表する天空の乗物・宮殿として広く知られている。

インド古代文献におけるヴィマーナ

『ラーマーヤナ』におけるヴィマーナ


ヒンドゥー教の二大叙事詩『ラーマーヤナ』では、ヴィマーナは神々の乗物として描かれている。その代表例が「プシュパカ・ヴィマーナ」であり、空中を移動するための「空を飛ぶ宮殿」のような存在として表現されている。乗員の望む場所へ向かう性質を持つ乗物とされ、太陽のように輝き、空に浮かぶ明るい雲にも例えられている。この他にも神々が天空を移動するための乗物が登場するが、プシュパカ・ヴィマーナほど詳細な描写が残されている例は少ない。

『マハーバーラタ』におけるヴィマーナ


ヒンドゥー教の二大叙事詩『マハーバーラタ』には、神々や英雄たちが乗る飛行する乗物が登場する。これらの乗物は戦場や旅に向かう際に用いられ、空中を移動して天界と地上を往来する存在として描かれている。人間の乗る戦車とは異なる神秘的な性質を備えており、神々の都や天空世界との往来に使用される描写が見られる。また、神々が英雄を天界へ招く際の乗物として登場する場面もある。

ヴェーダ文献(リグ・ヴェーダなど)における原型的描写


ヒンドゥー教最古の聖典群であるヴェーダ文献には、後世に広く知られる「ヴィマーナ」という概念はまだ明確には登場しない。しかし、『リグ・ヴェーダ』をはじめとする古層の文献には、神々が天空を移動する戦車や乗物の描写が数多く見られる。太陽神スーリヤの戦車、双神アシュヴィンの戦車、雷神インドラの戦車などは、天空を駆ける神聖な乗物として詩的に語られている。

ジャイナ教文献におけるヴィマーナ


ジャイナ教文献においてヴィマーナは、主として天界に存在する神々の宮殿や居住空間として描かれる。ヒンドゥー教文献に見られるような戦闘用の飛行戦車としての性格は比較的弱く、天空に浮かぶ壮麗な建造物として表現されることが多い。これらのヴィマーナは神々や高位の存在の住まう場所として語られ、その規模や豪華さが強調される。移動能力を持つものとして描かれる場合もあるが、ジャイナ教文献では乗物というより天界の宮殿としての意味合いが強い。

ヴィマーナの種類

インド古代文献に登場する代表的なヴィマーナ


・プシュパカ・ヴィマーナ(Pushpaka Vimana):クベーラが所有し、後にラーヴァナ、ラーマへと渡った飛行宮殿
・サウバ(Saubha):シャールヴァ王が使用した空飛ぶ城塞
・トリプラ(Tripura):アスラたちの三つの都市で、金・銀・鉄の三都市として描かれることが多い。

近代文献『ヴィマニカ・シャーストラ』に記されるヴィマーナ


・ルクマ・ヴィマーナ(Rukma Vimana):黄金色のヴィマーナ。円錐形・多層構造として説明されることが多い
・シュクナ・ヴィマーナ(Shakuna Vimana):鳥を模した形状とされる(ヴィマニカ・シャーストラの中で有名)
・スンダラ・ヴィマーナ(Sundara Vimana):「美しいヴィマーナ」の意
・トリプラ・ヴィマーナ(Tripura Vimana):ヴィマニカ・シャーストラの分類として登場
・アグニホートラ・ヴィマーナ:ヴィマニカ・シャーストラ関連の解説で語られることがある

データ


種 別 伝説の乗物
資 料 『ラーマーヤナ』、『マハーバーラタ』、ヴェーダ文献、ジャイナ教文献
年 代 紀元前1500〜前500年頃(ヴェーダ文献)
紀元前5〜1世紀頃(ラーマーヤナ)
紀元前4〜前2世紀頃(マハーバーラタ)
紀元前3〜紀元後5世紀頃(ジャイナ教文献)
備 考 叙事詩では飛行戦車、ヴェーダでは天空の戦車、ジャイナ教では天界の宮殿として描かれる