珍奇ノート:水虎の資料



水経注(6世紀)


「水中にはある生き物がいる。その姿は三、四歳ほどの子供に似ており、鱗や甲は鯪鯉(リョウリ=センザンコウ)のようである。矢を射ても貫くことはできない。七、八月頃になると、砂州の上で日光を浴びることを好む。その膝頭は虎のようで、掌や爪は常に水中に隠れているため、膝頭だけを水面に出している。

事情を知らない子供がそれを取って遊ぼうとすると、たちまち殺されてしまう。またある説では、生け捕りにしたものは、その『皋厭(こうえん)』を取り除けば、ちょっとした使い走りとして使うことができるという。これを水虎と呼ぶ。」

太平御覧(10世紀)※『襄沔記』の引用


『襄沔記』には次のようにある。

「中廬には涑水という川があり、沔水に注いでいる。この川の中にはある生き物が棲んでいる。その姿は三、四歳ほどの子供に似ているが、膝頭は虎の掌のようである。普段は水中に潜んでおり、膝頭だけを水面に出して人に見せる。事情を知らない子供がそれを面白がって弄ぼうとすると、たちまちその子供を食ってしまう。生け捕りにした者がいれば、その鼻をつまんで押さえることで、小間使いとして使うことができる。これを水虎という。」

本草綱目(16世紀)


溪鬼蟲 附録 水虎
時珍はいう。『襄沔記』には次のようにある。

中廬県には涑水という川があり、沔水に注いでいる。その川の中に、三~四歳の子供のような姿をした生き物がいる。甲は鯪鯉(リョウリ=センザンコウ)のようで、射てもその鼻を摘まない(摘めない)※が、少しばかり使役することができる。これを水虎という。

七月には川を渡ることができるが、それ以外の月には人を殺す。その気には邪悪なものがあり、声は聞こえるが姿は見えない。これに当たると皮膚が青黒くただれてしまう。これを鬼弾という。

※この部分は「鼻をつまむことで使役することができる」と解釈されてきたという

通雅(17世紀)


「水虎とはすなわち水唐である。鼻厭はその陰勢(生殖能力)を抑えるものである。

『水経注』には次のようにある。

『沔水は黎丘故城を経てさらに南へ流れ、疎水と合流する。疎水は中廬県の西南に発し、東へ流れて県北の境界に至り、さらに東流して沔水に注ぐ。この合流地点を疎口という。その水中には生き物がいて、三、四歳ほどの子供のような姿をしている。鱗や甲は鯪鯉(リョウリ=センザンコウ)のようで、矢を射ても貫くことができない。

七、八月頃になると砂州の上で日光を浴びることを好む。その膝頭は虎の掌に似ており、爪は常に水中に隠れている。膝頭だけを水面に出しているため、事情を知らない子供が取って遊ぼうとすると、たちまち殺されてしまう。生け捕りにした場合は、その皋厭を取り除けば小間使いとして使うことができる。これを水唐という。』」

また、『後漢書』郡国志の注に引用された『盛氏荊州記』には、「生け捕りにしたものは、その鼻厭を取り除けば従わせることができる。」とある。

さらに『十道志』が引用する『襄沔記』には「生け捕りにしたものは、その鼻をつまめば小間使いとして使うことができる。これを水虎という。」と記されている。

孫汝澄は「皋厭とは水虎の生殖器のことであり、媚薬として用いることができ、また男女の交わりを助ける効能がある。『皋厭』と『鼻厭』は字の誤伝である。」と述べている。

さらに『物類相感志』では「水虎」を誤って「水唐」と記し、「疎水」を「涑水」と書き誤っている。

和漢三才図会(1712年)


珍奇ノート:水虎の資料

水虎
【『本草綱目』では「蟲部」の附録に水虎を載せているが、これは虫類ではないため、本書では「怪類」に改めて収録する。】

『本綱』には次のように記されている。

「水虎について、『襄沔記』の注にいう。『中廬県に涑水という川があり、沔水に注いでいる。その川の中に生息するものがいる。姿は三、四歳の子供のようで、甲羅は鯪鯉(リョウリ=センザンコウ)に似ている。矢で射ても貫くことができない。秋になると砂浜に上がって日を浴びる。

その膝頭は虎の掌や爪に似ている。普段は水中に潜み、膝だけを水面に出して人に見せる。子供がこれを面白がって弄ぶと、たちまち人に噛みつく。生け捕りにした場合は、その鼻をつまんで押さえれば、小間使いとして使うことができる。』」

按ずるに、水虎の姿形は本朝の川太郎(河童)の類にあたり、共通点も相違点もある。しかし、このような生き物が実際に存在するかどうかは、いまだ聞いたことがない。

格致鏡原(18世紀)


『水経注』には次のようにある。

「疎水の中にはある生き物がいる。その姿は三、四歳ほどの子供に似ており、鱗や甲は鯪鯉(リョウリ=センザンコウ)のようである。矢を射ても貫くことはできない。砂州の上で日光を浴びることを好み、その膝頭は虎の掌に似ている。爪は常に水中に隠れており、膝頭だけを水面に出している。

事情を知らない子供がそれを取って遊ぼうとすると、たちまち殺されてしまう。生け捕りにした場合は、その『皋厭』を取り除けば小間使いとして使うことができる。これを水虎という。」

『湘烟録』で孫汝徴は次のように述べている。

「皋厭とは、水虎の生殖器のことである。これは媚薬として用いることができ、また男女の交わりを助ける効能がある。」

今昔画図続百鬼(1779年)


珍奇ノート:水虎の資料

水虎(すいこ)
水虎はかたち小児のごとし。甲(かう)は鯪鯉(せんざんぎよ)のごとく。膝頭(ひざがしら)虎の爪に似たり。つねに深水の底にすむといふ。沙のうへに甲を曝(さら)すといふ。