天逆毎姫の資料
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『先代旧事本紀大成経 巻第五』(抜粋)
服狹雄尊(ソサノヲ)が胸や腹に満ちた猛き氣の余りを吐き出すと、それが天狗神に化生した。その姫神の威は強く、その躯は人の身で、頭は獣の首であった。鼻も耳も長く、獣のような牙があった。ともかく意に従わず、大いに怒って、甚だ荒んでいる。大力の神といえども その鼻に懸けて千里に投げる。また、強堅の刀戈といえども 噛んで牙に掛けてずたずたに壊してしまう。
何をやっても穏当にすることが出来ず、中の善神が計るところ、左というのに逆らって右と言い、また前を後ろと言ったりした。左に逆うので、右もまた同じである。前もそのようにいう。これによって、名を天逆毎姫(アメノサコヒメ)というが、自ら推し名付けた名を天逆毎姫尊という。天の逆氣を呑んで、独りでに孕んで子を生んだ。その名を天魔雄命(アマノサカヲ)という。
天尊の命に従わず、諸事のしわざにも善きことを為さなかったので、八百萬神らは悉く持て余してしまった。その時、天照太神は議って諸神に「天逆毎姫神は、外に天降りもせず、八極の理にも漏れていない。汝ら諸神らは祓いの祭りをせよ。そこで弊索を八極に掛けて、総ての祓解をすれば、天逆毎姫は免れるであろう」と告げると、八百萬神らは一同にこれを聴いて、鎖に弊を付けて天長針を八隅に推し刺した。これを以って高祓で天を祓い、天清之法で清めた。しかし、この天逆毎姫を止めることができず、天逆毎姫は八百萬神に向かって「汝ら八百萬神は、吾が子神の天魔雄命を九張天の九間虚王とせよ。もし我が望みに従うならば、永らく逆らうことはない」と言った。これを八百萬神らが天尊に知らせると、天尊は天祖に知らせて、赦して九虚の王とした。
このような邪事は、服狹雄尊が自ら起こした猛荒き氣の心によるものである。これは勇ましき者の忠節ではなく、潜めていた大いに過ぎた逆心によって為された害である。よって、世間における天魔障神はこの事が元である。
※漢文を直訳して現代語訳にしているので、正直 精度には自信がありません
『和漢三才図会 治鳥』(抜粋)
(前略)
ある書には、服狹雄尊(ソサノヲ=素盞鳴尊)が猛き氣が胸や腹に満ちるあまり、それを吐くと天狗神に成ったという。それは姫神で、躯は人の身だが、頭は獣の首である。鼻が高く、耳は長く、牙も長い。左右(ともかく)、他の意に従わず、太(にへぎま)に怒り、甚だ荒む。大力の神といえども鼻にかけ、即座に千里に挑(はね)る。また、強堅の刀戈といえども、噛んで牙に掛けてずたずたに壊してしまう。
つねに事を穏当にすることが出来ず、左にある者を以って、早逆らって「右である」といい、また、前にある者は「後である」という。そして、自ら推し名付けて「天逆毎姫(アマノサコノヒメ)」という。天の逆氣を呑んで、独りでに孕んで子を生んだ。それを「天魔雄神(アマノサカヲノカミ)」と名付けた。
天尊の命に従わず、諸事のしわざにも善きことをなさず、八百万神らは悉く持て余してしまった。天祖は赦して天魔雄神を九虚の王にして、荒ぶる神・逆らう神は皆これに属させた。そして、かの神どもは心腑に託して意(おもい)を変じ、令敏(さと)き者にこれを高ぶらしめ、愚かなる者はこれを迷わせた。これが俗にいう"天狗"および"天の佐古(あまのざこ)"の類か。正説ではないが、これを記して考えるに備う。
鳥山石燕『今昔画図続百鬼(天逆毎)』
ある書によれば、素戔嗚尊が胸に溜まった猛気を吐き出し、それが一柱の神となった。その神は、人の身体に獣の首を持ち、鼻は高くて耳は長い。大きな力を持つ神も千里の彼方へ投げ飛ばし、強堅な刀をも噛み砕いてしまう。その名を天逆毎姫(アマノザコノヒメ)といい、天の逆気を飲み込んで独身で子を産んだ。その名を天魔雄神(アマノサクノカミ)という。
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