天逆毎姫 / 天逆毎【アメノサコヒメ / アマノザコ】
珍奇ノート:天逆毎姫 ― 天狗の祖とされる神 ―

天逆毎姫(あめのさこひめ)とは、『先代旧事本紀 大成経』に登場する神のこと。

服狹雄尊が吐いた猛き氣から生まれ、人の身体に獣の首を持ち、荒々しく捻くれた性格であったとされている。

また、同書では天魔障神の元凶とされており、一説に天狗の祖ともいわれている。


基本情報


概要


天逆毎姫は『先代旧事本紀 大成経』に登場する神である。この書には以下のような説話がある。

服狹雄尊(ソサノヲ)が高天原で悪事を働いていた時に、胸や腹に満ちた猛き氣の余りを吐き出すと、そこから天狗神が生まれた。それは霊威の強い女神であり、身体は人のようであるが、頭は獣のようであり、鼻と耳が長く、獣のような牙を持っていた。

荒々しく常に怒っており、誰にも従おうとせず、相手が大きな力を持つ神であっても鼻で掴んで千里の先に投げ飛ばした。また、強堅な刀や戈で攻められても、それに噛み付いて牙でズタズタに壊してしまった。ひねくれた性格で、心が左と思っても それに逆らって右と言い、また前を後ろと言うなど常に逆のことを言うので、天逆毎姫(アメノサコヒメ)と名付けられたが、自ら天逆毎姫尊と名乗って尊称で呼ばせたという。

この天逆毎姫は、天を逆氣を呑んで独りでに孕んで子を生んだとされ、その子神は天魔雄命(アマノサカヲ)と名付けられた。この母子は共に天尊に命令に従わず、善い事を全く為さなかったので、八百万神は皆が呆れて持て余してしまった。そこで天照太神は八百万神を集めて相談し、祓いの祭りを行わせて総ての祓いを成せば、天逆毎姫は心を入れ替えるだろうと考えて、神々に清めさせたが、天逆毎姫の性格は変わらなかった。

しかし、天逆毎姫が「もし、我が子の天魔雄命を九虚の王にするならば、永らく逆らうことはない」と条件を出したので、神々がこれを天祖に知らせると、天祖は赦して天魔雄命を九虚の王にしたという。

この書では、天逆毎姫・天魔雄命が世間における天魔障神の元凶であると説明されている。『天狗名義考』でも同様に天逆毎・天魔雄を「日本天狗ノ元祖ナリ」としており、「天狗」の字に「あまのざこ」という訓読を付けている。

また、天逆毎は妖怪画で知られる鳥山石燕の『今昔画図続百鬼』にも記されている。

データ


種 別 神仏
資 料 『先代旧事本紀 大成経』『今昔画図続百鬼』ほか
年 代 神代
備 考 記紀神話には登場しない、天狗の祖とされる