グズ
珍奇ノート:グズ ― 石川県に伝わる伝説の怪魚 ―

グズとは、石川県に伝わる伝説の怪魚のこと。

体長10メートルを超える巨大な身体を持ち、口から火を吹いて人々に被害を与えたといわれている。

なお、グズはドンコという淡水魚の地方名でもある。


基本情報


概要


グズは、石川県の動橋川に棲んでいたとされる巨大な怪魚で、口から火を吹いて田畑を荒らし回ったので、村人たちは毎年一人の娘を生贄に出すことで災難を避けていたが、生贄に選ばれた娘を持つ庄屋が振橋神社に祈ったところ、グズ退治に協力するという僧が現れたので、村人たちと共にグズを焼き殺した。

この僧の正体は振橋神社の祭神であるオオナムチであり、感謝の印として僧の現れた8月27日に祭を行うことにした。これが今のぐず焼まつりの由来であるといわれている。なお、この祭は毎年8月27日~29日に振橋神社周辺で行われ、27日夜に巨大なグズの張子を担いで練り歩き、28日夜に振橋神社の境内で焼却するという、伝説に基づいた内容になっている。

データ


種 別 日本妖怪、伝説の生物
資 料
年 代 江戸時代頃
備 考 ぐず焼まつりという祭礼の由来になっている

ぐず焼まつりの由来


珍奇ノート:グズ ― 石川県に伝わる伝説の怪魚 ―

昔、動橋川(石川県)に10数メートルの大きなグズが棲んでいた。

グズは口から火を噴いては田畑を荒らし回ったので、村人たちは毎年一人の娘を生贄にして災難を避けていた。なお、グズは欲しい娘があると、夜中にその家の戸口に自分の姿を描いた紙を貼り付けた。

ある年、庄屋の娘が選ばれたので、庄屋はどうか娘が助かるようにと氏神の振橋神社に祈願した。すると、グズが来るという8月27日に庄屋の家の戸口が鳴り、恐る恐る庄屋が戸を開けてみると そこには僧が立っていた。

そして、娘が生贄にならないよう力を貸そうと言うので、庄屋は地獄に仏と思いながら僧の話を聞き、その指示に従った。また、心強い味方を得たと、村人たちも協力することにした。

皆はグズの住処である古池の大穴の前に来ると、そこに沢山の薪を積んだ。僧が薪に火をつけると、炎は瞬く間に穴の中に燃え広がり、やがてグズにも燃え移った。そこで逃げ場を失ったグズは、炎に焼かれて断末魔を上げながら燃え尽きてしまったという。

村人たちは歓声を上げて僧に礼をしようと思ったが、すでに僧は姿を消していた。村人たちは「あの僧は振橋神社に祀られている大己貴命様に違いない」と言って、感謝をこめて毎年8月27日には祭りを行うことにした。

これが、今でも行われている ぐず焼まつり の始まりである。