鬼鹿毛 ― 伝説の人喰い馬 ―
鬼鹿毛(おにかげ)とは、人喰い馬と恐れられた伝説の荒馬のこと。
奥浄瑠璃『田村三代記』や長生院の『小栗略縁起』などに登場している。
基本情報
概要
鬼鹿毛は人喰い馬と恐れられた伝説の荒馬で、奥浄瑠璃『田村三代記』や長生院に伝わる『小栗略縁起』に登場する。
『田村三代記』では、千熊丸(後の坂上田村麿)が素性を隠して実父の利光に仕えていた時に、利光は千熊丸の秀でた才能から謀反を恐れて亡き者にしようと考えた。その頃、丹波国には鬼鹿毛という人喰い馬がいたので、利光は「鬼鹿毛を乗りこなせ」という難題を千熊丸に押し付けた。すると、千熊丸は丹波国の鬼鹿毛の元に向かい「もし、私に従うならば、馬頭観音を崇めよう」と言うと、鬼鹿毛は涙を流して千熊丸を乗せたので、千熊丸は都に帰って鬼鹿毛に跨り、利光の前で見事な馬術を披露したとされている。
『小栗略縁起』では、常陸国の小栗の城主であった小栗満重は、足利持氏の讒言によって謀反の疑いをかけられて鎌倉方に攻め落とされてしまった。満重は少数の家来と共に落ち延び、商人に扮して三河の一族の元に向かっていたところ、相模国の藤沢で日が暮れたので、横山大膳という者に宿を借りることにした。横山は屋敷に多くの女を抱えていたが、その中には照日姫という美女がおり、満重が照日姫と懇ろになると、これを恨んだ横山は 必ず人を噛み殺すと言われた鬼鹿毛という荒馬に満重を乗せて殺そうとした。しかし、馬術に長けた満重は難なく乗りこなしてしまったとされている。
鬼鹿毛の馬頭観音
埼玉県新座市の「鬼鹿毛の馬頭観音」にも鬼鹿毛の伝説があり、この伝説では荒馬ではなく良馬だったとされている。この伝説によれば、秩父の小栗という者が江戸の急用に向かう際に愛馬の鬼鹿毛に乗っていたところ、道の途中の大和田にあった松の大木の根につまづいて倒れてしまった。しかし、鬼鹿毛はすぐに立ち寄って小栗を江戸まで届けた。その後、所用を終えた小栗が鬼鹿毛の元に戻ると姿が無かったので、歩いて帰っていると、大和田に鬼鹿毛の亡骸があったという。この後に村人が、主人のために亡霊になってまで走り続けた鬼鹿毛の霊を弔って、この馬頭観音を建てたと伝えられている。
データ
種 別 | 伝説の生物 |
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資 料 | 『田村三代記』『小栗略縁起』ほか |
年 代 | 平安~江戸時代 |
備 考 |
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