登蛇(トウダ) ― 暴風雨を呼び寄せる怪蛇 ―

登蛇(とうだ)とは、新潟県西部に伝わる怪蛇のこと。
尾先で直立することができ、暴風雨を呼び寄せる凶兆とされている。
基本情報
概要
登蛇は越後国(現在の新潟県西部)に伝わる怪蛇で、体長は5~6寸(約15~18cm)ほどの小蛇であり、尾の先で直立することができるとされる。
江戸時代の奇談集『北越奇談』によれば、頸城郡松の山村の聖敬寺の近くで、老僧と客が語らっていた際、沢辺から現れた「小蛇」が石に登って尾先で直立し、細い鳴声を発したという。これを見た老僧は異変を察して雨支度を急ぐと、奇雲が現れるとともに小蛇が姿を消した。すると、猛烈な暴風雨が吹き荒れ、さらに雲間から蛟龍のような怪物が顔を出して空を縦横に飛び回ったという。また、その三年後には山奥で大蛇の枯骨が発見されたとも記されている。
この奇談では、老僧は登蛇を「天に登る蛇」であると語っており、登蛇の出現が異常気象や龍の出現と結びつけて理解されていたことがうかがえる。また、続けて大蛇の枯骨の話に続いていることから、登蛇が蛟龍へと成長する存在ということが示唆されているとも解釈できる。なお、中国では水虺(水のヘビ)が生まれて500年後に蛟龍になると伝えられており、この逸話が示唆する流れと一致している。ただし、本文中で両者の関係が明示されているわけではない。
『北越奇談』の筆者・小川環樹は、これを「天に登る龍が人の目に触れると天帝に罰せられる」という説に通じるものかもしれないとしつつも、その説自体は信ずるに足らないものとして退けている。また、作中に登場する聖敬寺についても実在が確認できず、この話全体が創作色の強い奇談である可能性も否定できない。
データ
| 種 別 | UMA |
|---|---|
| 資 料 | 『北越奇談』 |
| 年 代 | 江戸時代 |
| 備 考 |
北越奇談 巻之一「登蛇」(1812年頃)

頸城郡の松の山村にある聖敬寺は、古い木々が生い茂り、昼間でも薄暗い。庫裏は大きな沢に面しており、水は清らかに流れ、夜もその様子は明瞭であった。
ある年の秋の終わり、老僧と客が向かい合って話をやめ、しばらく黙って座っていたとき、沢のほとりから小さな蛇が現れた。長さは五、六寸ほどで、石の上に這い上がり、尾をわずか四、五分ほど石につけて直立し、一声、細く鳴いた。
客は不思議に思い僧に尋ねると、僧は言った。
「これは、まさしく天に登る蛇である。油断してはならぬ。」
僧は人を呼び、干物などを片付け、窓を閉じ、柴に覆いをかけるように指示した。その最中、ひとすじの奇妙な雲が軒先に現れると、小蛇はたちまち姿を消した。
その後、猛烈な暴風が吹き荒れ、木々を倒し山を揺るがせ、雲の中に蛟龍が現れ、西へ飛び、東へ馳せ、北へ翻り、南へ駆け巡ること数十度。大雨はますます強まり、岩を穿ち、山を割り、洪水が沢に溢れ、暗さは闇夜に等しかった。朝の五時から夕方の七時まで、戸を開けることはできなかった。まるで天地が傾き、地が崩れ落ちるかのように恐ろしい有様であった。
しかし、突如として空中に一声の響きがあり、山林が揺れたものの、風雨はすぐに晴れ去り、蛇や龍の行方もどこへ去ったのか分からなかった。
その三年ほど後、初春の頃、深山に入った木を伐る人が言った。
「大蛇の枯骨が数丈の長さで転がっているのを見た。」
筆者の考えでは、天に登る龍が人の目に触れると天帝に罰せられるとされる。この話もそれに関係するものかもしれない。ただし、この説自体も信じるに足るものではない。
ある年の秋の終わり、老僧と客が向かい合って話をやめ、しばらく黙って座っていたとき、沢のほとりから小さな蛇が現れた。長さは五、六寸ほどで、石の上に這い上がり、尾をわずか四、五分ほど石につけて直立し、一声、細く鳴いた。
客は不思議に思い僧に尋ねると、僧は言った。
「これは、まさしく天に登る蛇である。油断してはならぬ。」
僧は人を呼び、干物などを片付け、窓を閉じ、柴に覆いをかけるように指示した。その最中、ひとすじの奇妙な雲が軒先に現れると、小蛇はたちまち姿を消した。
その後、猛烈な暴風が吹き荒れ、木々を倒し山を揺るがせ、雲の中に蛟龍が現れ、西へ飛び、東へ馳せ、北へ翻り、南へ駆け巡ること数十度。大雨はますます強まり、岩を穿ち、山を割り、洪水が沢に溢れ、暗さは闇夜に等しかった。朝の五時から夕方の七時まで、戸を開けることはできなかった。まるで天地が傾き、地が崩れ落ちるかのように恐ろしい有様であった。
しかし、突如として空中に一声の響きがあり、山林が揺れたものの、風雨はすぐに晴れ去り、蛇や龍の行方もどこへ去ったのか分からなかった。
その三年ほど後、初春の頃、深山に入った木を伐る人が言った。
「大蛇の枯骨が数丈の長さで転がっているのを見た。」
筆者の考えでは、天に登る龍が人の目に触れると天帝に罰せられるとされる。この話もそれに関係するものかもしれない。ただし、この説自体も信じるに足るものではない。
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