ズミィ【Żmij】
珍奇ノート:ズミィ ― ポレシエ地方に伝わる翼を持つ火の蛇 ―

ズミィとは、東欧のポレシエ地方に伝わる伝説の翼を持つ蛇のこと。

バジリスクのような特殊な方法で生まれ、人間に使役されるという特徴を持っている。


基本情報


概要


ズミィは、ポーランドとベラルーシ国境付近のポレシエ地方に伝わる伝説の翼を持つ蛇である。当地の伝承によれば、雄鶏の卵から生まれるなど普通の蛇とは異なる方法で生まれ、成長が早く、翼と非常に長い尾を持ち、飛行する際には火花を散らすといわれている。また、かつては人に使役されており、主人の魂が望むままに食糧や財宝を運んでくるが、追い払おうとすると必ず復讐し、家に火を放ったり家人を病に冒して全滅させると伝えられている。

このズミィに関しては、19世紀のポーランドの民俗学者オスカル・コルベルクの民族誌全集『Lud』に詳しく記載されている。この書籍によれば、ズミィはかつては当たり前のように存在しており、どの家もズミィを使役して富を得たいと考えていたとされる。しかし、ズミィは自らの身と魂を差し出した者しか主と認めず、怒らせると財産がすべて灰にされることから、諸刃の剣のような存在と認識されていたようだ。

ズミィは誕生についても他の生物とは異なり、一説には 雄鶏から産まれた卵を雌鶏が7年間温め続けることで産まれ、それを人間が祈らず身体も洗わずに9日間かけて腋の下に挟んで持ち歩かなければ孵化しないという。また一説には、7年間太陽を見ず人の声も聞かずにいた蛇から産まれ、異常な早さで成長すると翼と体内に火を宿すようになり、やがて火のズミィとして世に飛び出すといわれた。

また、ズミィは鐘の音を極端に嫌い、鐘がなると遠くに逃げたり、その場で心臓が破裂して死んでしまうという。そのため、かつては人と共生していたが、人が罪を犯すようになり、教会の鐘がよく鳴るようになったことで全滅したといわれている。なお、最後に目撃されたズミィは農奴制の時代(推定1860年代以前)に発見されたもので、当時を知る老人は「湿地の上空を飛んでおり、家の中まで見えるほど強烈に輝いていた」と語ったと記録されている。

正体については定かではないが、雄鶏の卵から生まれるという点はヨーロッパ全土に見られる「バジリスク」の伝承と一致し、製法については錬金術における「ホムンクルス」に類似性が見られる。また、使役されるという点については、日本の「犬神」や「オサキ」のような代償を伴って利益を得る憑き物に類するものと考えられる。

データ


種 別 UMA、伝説の生物
資 料 『Lud』(第31巻)
年 代 19世紀
備 考 スカイサーペントの事例として引用されることがある

『Lud』原文の日本語訳


昔、人々がまだ敬虔で、今のような悪が世に満ちていなかった頃、ズミィは空を飛び、人々に仕えて金銭を運んでいた。ズミィとは、非常に長い尾を持ち、飛ぶとき火花を散らす火の蛇である。

当時は多くのズミィが存在しており、どの家の主人も富をもたらしてくれるズミィを持ちたがった。しかしズミィは誰にでも仕えるわけではなく、自分に身を売り、魂を差し出した者にしか仕えなかった。

今ではズミィはこの世にはいない。人間の罪によって、そして教会の鐘の音がますます大きく鳴るようになったため、すべて絶滅してしまったのだ。ズミィは鐘の音を嫌い、鐘が鳴るのを聞くと、すぐに人里離れた遠くへ逃げるか、あるいはその場で死んでしまう。鐘の轟音で心臓が破裂するからである。

最後のズミィは、まだ農奴制の時代に年寄りたちによって目撃されており、湿地の上を飛び、その光は家の中まで見えるほど強く輝いていたという。それ以来、誰もズミィを見た者はいない。今ではおとぎ話の中で語られるだけだが、かつて実在していたのは確かな真実である。

ズミィは他の生き物のように生まれるのではなく、雄鶏の卵から生まれる。ズミィが孵るには、その卵を雌鶏が七年間温め続け、その後、人間が九日間、体を洗わず、祈らずに腋の下に挟んで持ち歩かなければならない。

また別の者たちは、ズミィは七年間太陽を見ず、人間の声も聞かずにいた蛇から生まれると言う。その蛇は異常に成長し、翼と内なる火を持つようになり、やがて火のズミィとして世に飛び出す。

ズミィを持つ者は、魂が望むものすべてを手に入れる。ズミィが隣人の穀物、隠された財宝からの金銭、他人の貯蔵庫のバターまでも運んでくるからである。しかし、それを追い払おうとする者には災いが訪れる。ズミィは激しく復讐し、家に火を放つか、家族全体に病をもたらし、誰も生き残らないほどの被害を与える。

そのため、昔の人々は湿地にいる年老いた蛇を殺すことを恐れた。それが、家に幸福をもたらすか、あるいは灰に変えてしまう未来のズミィかもしれなかったからである。

出典:オスカル・コルベルク『Lud』ポレシエ地方の伝承より