ウェールズの翼のある蛇【Welsh Winged Serpents / Gwiber】
珍奇ノート:ウェールズの翼のある蛇 ― ウェールズの翼蛇伝説 ―

ウェールズの翼のある蛇とは、17~19世紀にかけてウェールズで目撃されていたと伝わる翼蛇のこと。

知名度が低く統一された固有名詞が存在しないため、便宜的にこの名称を用いることにする。


基本情報


概要


ウェールズの翼のある蛇は、ウェールズ各地の民間伝承に登場する蛇型のUMAである。蛇のような細長い体に翼を持つという点が共通する特徴で、全身が宝石のように輝く鱗で覆われているものや、虹色に輝く冠を持つもの、まるでドラゴンのように見えるものなど様々な違いも見られる。主に森や渓谷など人里離れた場所を好むとされるが、個体によっては人里に現れて人や家畜を襲ったとも伝えられている。

これらの伝承は、1909年にイギリス(ウェールズ)の民俗学者マリー・トレヴェリアンが刊行した著作『Folk-Lore & Folk-Stories of Wales』に記録されているものであり、各事例に明確な年代は示されていないが、概ね17~19世紀にかけて語り継がれてきた伝承だと考えられる。その具体例は以下の通りである。

ウェールズの翼のある蛇の伝承


ランライアズ=イン=モクナントの人食い翼蛇


北ウェールズのランライアズ=イン=モクナント周辺に出没した「翼を持つ蛇(ドラゴン)」のこと。広範囲を徘徊し、家畜の群れを全滅させるだけでなく、人間の男女や子どもまで捕らえたとされる。

住民のあらゆる討伐策が失敗した後、赤い布で覆った鉄の棘付き石柱を設置し、色に引き寄せられた怪物が長時間突進を繰り返した結果、失血と疲労で死亡した。討伐地点は現在も「ポスト・コッホ」「ポスト・イ・ウィバー」「マエン・ヒール・イ・メイス・モクナント」と呼ばれている。

ニース渓谷の滝に現れた翼蛇群


南ウェールズのニース渓谷一帯で、ペルディン、メルテ、ヘプステの滝付近や、ポント=ニース=ヴォーン周辺の峡谷に「翼を持つ蛇」が出没したとされる。エアウッド、レゾルヴェン、イストラドグンライスの滝の傍では実際に飛翔する姿が見られたと伝えられている。

ペンリライン城周辺の宝石のような翼蛇


グラモーガンのペンリライン城周辺の森には「非常に美しい翼蛇」が出没し、老若男女を問わず恐れられていた。休息時はとぐろを巻き、あらゆる種類の宝石で覆われているかのように見え、虹色に輝く冠を持つ個体もいたという。邪魔されると全身をきらめかせながら素早く滑るように隠れ場所へ移動し、怒ると翼を広げて人々の頭上を飛び、目は孔雀の尾羽のように輝いたと証言されている。

祖父の代に翼蛇を殺害した家系の証言


ある男性は、父親から「祖父の時代に翼を持つ蛇のような存在を実際に殺した」と聞かされていた。その生物は「翼を持つ蛇」のようで、まさに「ドラゴン」のようだったと描写され、当時は農場とその周辺一帯の恐怖の的であったという。

19世紀初頭のペンリライン住民による複数回目撃


19世紀初頭、非常に誠実であると評判の老人が、ペンリライン城周辺の森で翼蛇を何度も目撃したと語っている。彼はそれらを「非常に美しい存在」と明確に表現している。

三代にわたる継承証言(母・娘)


19世紀半ばに80歳で亡くなった女性は、自分の母親(彼女が亡くなった時点ですでに非常に高齢)が「グラモーガンの翼蛇」についてよく語っていたと証言している。母親はペンリラインの森で実際に目撃しており、さらにその娘である彼女自身も幼少期に目撃したという。これは三代にわたる証言となっている。

母乳を飲んで飛翔能力を得た蛇の伝承


蛇が女性の乳を飲むと、やがて飛べるようになるという民間伝承がある。農作業中、畑の隅に置かれていた幼児から蛇が母乳を吸う様子を母親が目撃した。そんな日々続いた結果、子どもは衰弱して死亡したという。それから蛇は次第に巨大化し、脱皮後には「翼と輝く冠を持つ姿」で再び目撃されるようになったという。

クレイグ=イ=リン麓の翼蛇遭遇


1850年頃にニース渓谷のクレイグ=イ=リンの麓で亡くなった男性が、少年時代に翼蛇を目撃したという。全身が魚の鱗のような鱗で覆われており、色はあらゆる色彩を帯び、長さは約1ヤード(約90cm)だった。翼蛇は少年を見ると翼を広げて頭上を飛び越え、森の中へ消えていったとされる。

データ


種 別 UMA、伝説の生物
資 料 『Folk-Lore & Folk-Stories of Wales』
年 代 17~19世紀
備 考 スカイサーペントの事例として引用されることがある