長臂人【チョウヒジン】
珍奇ノート:長臂人 ― 異様に長い腕を持つ人種 ―

長臂人(ちょうひじん)とは、中国に伝わる長い腕を持つ人種のこと。

長臂国に住み、長い脚を持つ人種である長股人に背負われて漁をしたといわれている。


基本情報


概要


長臂(ちょうひ)は中国に伝わる伝説上の人種で、非常に腕が長く、修臂(しゅうひ)と呼ばれることもある。

古代中国の地理書『山海経』によれば、焦堯国の東の長臂国に住む人種で、海中で魚を捕り両手に一匹ずるの魚を持っているとされている。なお、同書の挿絵には手に魚を持った異様に腕の長い人物が描かれている。

中国の類書『三才図会』では、焦堯国の東の長臂国に住む人種で、その国の人々は手を垂れると地に届いてしまうとされており、とある人が海中で拾った衣の袖は1丈(3.03m)の長さがあったということが記されている。また、同書の長股人の頁には、長臂人は並の人間と同じような体格だったが腕の長さは2丈(6.06m)あり、長い脚を持つ長股人に背負われて海に入り、そこで長臂人が水中に手を入れて魚を捕っていたと記されている。

この長臂については諸説あり、長股人に背負われて長臂人が魚を捕ったというのは、一説に中国の山東省日照市で行われているエビ漁のことではないかといわれている。このエビ漁は、漁師が長い棒を脚に装着して背を高くし、長い棒の付いた大きな網でエビをすくい捕るといったもので、現地では千年来の伝統的な漁法とされ、その光景は巨人が漁をしているようだとして観光客の注目を集めていたらしい。

日本における長臂
日本においては、長臂人は「手長」という妖怪、脚の長い長股人は「足長」という妖怪と見なされており、両者はあわせて「手長足長」あるいは「足長手長」として知られている。

手長足長」とされる場合は、神仙などめでたい存在と捉えられることがあり、御所の清涼殿にある「荒海障子」の中に描かれていたり、祭りの山車に彫刻として施されていたりする。

足長手長」とされる場合は、妖怪などの悪しき存在と捉えられることが多く、福井県では磐梯山に住んで人々を害していたために弘法大師が退治したという伝説がある。

また、青森県や関東地方には手長婆という妖怪が伝えられており、青森県や千葉県南房総市では長い手を活かして漁をしていたとされるが、関東の下総地方では水辺で遊ぶ子供を水中に引き込むといった悪い妖怪として伝えられている。

データ


種 別 怪人
資 料 『山海経』『淮南子』『三才図会』ほか
年 代 超古代(紀元前)
備 考 日本妖怪の手長に類似する

資料


『山海経(海外南経)』
長臂国は焦堯国の東面にあり、そこに住む人々は水中で魚を捕り、両手に一匹ずつ魚を持っている。また、海中で魚を捕るともいわれている。

『淮南子』
修臂 長臂人のこと。とても手が長い。

『三才図会』
長臂国は憔僥国の東にあり、海の東方に住んでいる。そこの人々は手を垂れると地に届いてしまう。昔ある人が海中で一つの布衣の袖を拾ったが、それは一丈(3.03m)あまりの長さがあったという。

『和漢三才図会』
長臂

『三才図会』が述べるところによると、長臂国という国が憔僥国の東方にあり、海の東の方に住む人は手の長さが地に届くほど長い。昔、ある人が海で衣を得たことがあるが、袖の長さが3メートル以上もあったから、やはりこの国の人の手が長いということが窺い知れた。そこで寺島良安がよくよく勘案するに、長臂国の人の腕の長さが6メートルもあるというのは信じられない。まあ、手でも足でも長いといったところでせいぜい3メートルほどであろう。