足長手長【アシナガテナガ】
珍奇ノート:足長手長 ― 足長人と手長人 ―

足長手長(あしながてなが)とは、日本や中国に伝わる妖怪のこと。

脚の長い足長と、腕の長い手長を指し、悪天候を招く妖怪であるといわれている。


基本情報


概要


珍奇ノート:足長手長 ― 足長人と手長人 ―

足長手長は福島県や長崎県に伝わる妖怪で、足長は異様に長い脚を持ち、手長は異様に長い腕を持つとされる。福島県では磐梯山に棲む夫婦の妖怪で わざと天候を悪くして麓の住民を困らせたとされ、長崎県では平戸城の西北の神崎山近辺に棲んでおり、姿を現すと必ず悪天候になるといわれているという。

この足長手長と類似するもの手長足長がいるが、こちらは主に「手足の長い巨人」として伝えられており、場合によっては神仙とされているため、妖怪の足長手長とは区別されている。

また、足長手長は足長人と手長人という特徴があるが、中国の資料には長股人という「脚の長い人種」と長臂人という「腕の長い人種」が居たとされており、これらと同一と見なされることがある。この長股人は長臂人を背負って漁をしたといわれているが、妖怪的な話は無く、日本では手長足長として絵画や彫刻のモチーフとなっていることが多い。

福島県の足長手長
福島県では磐梯山に棲む夫婦の妖怪で、夫の足長は異様に脚が長く、妻の手長は異様に腕が長かったとされ、足長は空に雲を集めて日の光を遮り、手長は湖の水をすくって雨のように振りまいていたという。このため、麓の里では作物が育たなくなって村人たちは困り果てたが、そこに旅の僧(弘法大師)がやって来て足長・手長の退治をすることになった。

この足長・手長は身体の大きさを自由に変えることができたとされており、弘法大師が"大きくなれるか"と言うと雲に届くまで大きくなり、"小さくなれるか"と言うと豆粒ほどに小さくなったという。弘法大師は足長・手長が小さくなったところで壺(あるいは鉄鉢・小箱)に入れ、それを布で包んで磐梯山の山頂に埋めて封じてしまったという。

これが磐梯山の山頂にある「磐梯明神」で、説話によっては弘法大師が足長・手長に「山の明神として祀るから人々に尽くすように」と言い聞かせたともいわれている(ただし、ただ封印したというものもある)。

長崎県の足長
長崎県の足長は江戸時代の随筆『甲子夜話』に登場し、平戸城の西北にある神崎山の付近の海である侍が従者と共に釣りをしていたところ、遠目の海岸に9尺(約2.7m)ほどの長い脚を持つ何者かが松明をかかげて佇んでおり、これを見た従者が「あれは足長というもので、あれが出ると必ず天気が急変するので早く逃げなければならない」と言うので、急いで帰ると途中で猛烈な雨が降ってきたという。このように現地では悪天候を招く妖怪として知られていた。

データ


種 別 日本妖怪、中国妖怪、怪人
資 料 『甲子夜話』、福島県の伝説
年 代 平安時代~江戸時代
備 考 磐梯山の足長手長は弘法大師に退治されたと伝わる