牛鬼【ウシオニ / ギュウキ】
珍奇ノート:多気郡の牛島 ― 三重県多気郡に伝わる牛鬼 ―

多気郡の牛島とは、三重県多気郡に伝わる牛鬼のこと。

当地には牛鬼伝説がいくつかあり、獣型や人型などの牛鬼が伝えられている。


基本情報


概要


三重県多気郡には牛鬼滝や牛鬼淵といった牛鬼と名の付く地名があり、そこには様々な牛鬼の伝説が残っている。その伝説は、獣型・人型の牛鬼や牛の亡霊が牛鬼となったというものであり、その内容は以下のようになっている。

獣型の牛鬼
昔、父ヶ谷に牛鬼淵と呼ばれる不気味な淵があり、その付近で山人が淵に飛び込む牛鬼の姿を目撃した。その姿は、頭は鬼で、身体は牛のようであり、とても恐ろしい姿だったという。恐ろしくなった山人は急いで麓の宮川村に帰ると、村人たちを集めて牛鬼のことを話した。すると、それを聞いた猟師が得意の鉄砲で牛鬼を退治ししてやろうと思い、案内の者を連れて山に入っていった。

そして牛鬼が現れるのを待ち伏せていると、やがて牛鬼が淵に飛び込んだので、猟師はすかさず鉄砲を2,3発ほど撃ち込んだ。しかし、牛鬼は全く効いてない様子で、そのうちどこかに消えてしまった。そこで、猟師は山小屋に泊まり込んで、牛鬼が現れるのを待つことにした。

その後、再び牛鬼が現れたので、猟師はここぞとばかりに鉄砲を何発も撃ち込んだ。しかし、またもや効いてない様子なので、猟師は肌身離さず持ち歩いていた「南無阿弥陀仏」と刻まれた銃弾を銃に込めて撃ち放った。すると、牛鬼に当たったのか、淵の辺り一帯が真っ赤に染まり、牛鬼の姿も見えなくなってしまったという。

人型の牛鬼
昔、伊勢国の山奥に牛鬼淵と呼ばれる深い淵があり、そこには牛鬼という頭が牛で身体が鬼の怪物が棲んでいるといわれていた。また、この山奥は木挽の仕事場でもあったので、いつも2人の木挽が山小屋に住んで仕事していた。

ある夜、囲炉裏端で老いた木挽がノコギリの手入れをしていると、見知らぬ男が戸口に顔を出して「何をしているんだ?」と尋ねてきたので、老いた木挽は「ノコギリの手入れをしているのだ」と答えた。すると男は小屋に入ろうとする素振りを見せたので、老いた木挽は「このノコギリの32枚目の刃は鬼刃と言い、鬼が出てきたら挽き殺すのだ」と言うと、男はどこかに去っていった。

その翌晩も同じ男がやって来て、同じ質問をして帰っていった。その翌朝、木挽らが大木を伐っていると、木の節に鬼刃が当たって折れてしまったので、老いた木挽は修理のために麓の村に降りることにした。だが、相方の若い木挽は面倒がって付いて行かず、小屋で酒を飲みながら帰りを待っていた。

その夜、また同じ男がやって来て同じ質問をすると、若い木挽は酒の勢いもあって「鬼刃は麓の村で修理している」と答えてしまった。すると、男は「今夜は鬼刃は無いんだな」と言って、小屋の中に入ってきた。翌日、老いた木挽が山小屋に帰って来ると、若い木挽の姿は無く、牛鬼淵にその着物が浮かんでいるだけだったという。

牛鬼になった牛の亡霊
昔、牛を連れた女が浦谷に向かう途中で滝上の絶壁を通った時、突然 牛が驚いて暴れだしたので、女は牛と共に滝の中に落ちて死んでしまった。その以来、夜になると髪を乱した女が牛鬼と共に現れて、山を通う人々を脅かすようになった。そこで、困り果てた里人は、諸国行脚をしていた高僧に祈祷してもらうと、女と牛鬼は現れなくなった。しかし、この滝は牛鬼滝と呼ばれて、人が近寄らなくなったという。

データ


種 別 日本妖怪、鬼、UMA
資 料 多気郡の伝説
年 代 不明
備 考