金龍 / 金竜【きんりゅう / キムロン】
珍奇ノート:金龍 ― 瑞祥として現れる黄金の龍 ―

金龍(きんりゅう)とは、日本などで信仰される金色の鱗を持つ龍のこと。

瑞祥・王権・守護などを象徴する龍として、各地の伝承や信仰に登場している。


基本情報


概要


金龍は、金色の鱗を持つ龍、あるいは金色の龍として現れる霊的存在の総称である。独立した龍種として体系化された存在ではなく、瑞祥・神格・王権・守護などを象徴する龍として各地の伝承や信仰に現れている。

日本においては、浅草寺(東京都台東区)の伝承が代表的な例として知られている。

『浅草寺縁起』によれば、推古天皇36年(628年)、宮戸川(現在の隅田川)から聖観世音菩薩の尊像が現れた日に一夜にして周囲に千株ほどの松が生じ、その三日後には天から百尺ばかりの金の鱗を持つ龍が松林の中に舞い降りたと記されている。この瑞祥により浅草寺は「金龍山」の山号を得たとされ、現在も寺舞として「金龍の舞」が奉演されている。

また、ベトナムにも類似した伝承が存在する。1010年、李公蘊(李太祖)がホア・ルーからダイ・ラーへ遷都した際、黄金の龍が水面から現れて天へ昇るのが目撃されたと伝えられている。この瑞祥によりダイ・ラーは「昇龍(タン・ロン)」と改名され、黄金の龍は王権の正統性を示す象徴として解釈された。

このように、聖地の成立や王都の創建に際して黄金の龍が出現するという構造は、中国において瑞祥とされた黄龍の出現と共通しており、金龍が黄龍と同一視または類似の存在として扱われる場合もある。例えば、田無神社(東京都西東京市)では五行思想に基づいて龍神が配されており、本殿の中心には金龍が祀られているが、これは中央を司る黄龍と同義の存在とされている。

また、新潟県新潟市の白山神社の境内にある黄龍神社の祭神は「黄龍(おうりゅう)」あるいは「金龍」と呼ばれるとされる。この龍神は白山の龍神信仰に関係が深く、黄龍大権現を祀るようにとの神託に基づいて1966年に建立したとされている。

この他、日本には金龍を祀る社寺が各地に存在する。春日大社(奈良県奈良市)の境内社である金龍神社では金龍大神が祀られており、これは天皇の象徴とされた龍信仰と結びついたものとされる。

さらに、大阪市西成区の天龍神社では、かつて池の主であった大蛇を起源とする龍神信仰の中で金龍大神が祀られている。この地域では天龍・金龍・銀龍・白龍黒龍の五龍神が結界として配置され、地域守護の役割を担うとされている。

仏教においても、弁財天と龍神信仰が習合した金龍弁財天として金龍が祀られる例が存在する。

以上のように、金龍は特定の種族としての龍ではなく、瑞祥として出現する龍、五行思想における中心龍、王権を象徴する龍、地域を守護する龍、仏教の守護龍など、多様な宗教的・象徴的文脈において現れる存在として整理することができる。

種 別 神仏、伝説の生物
資 料 『浅草寺縁起』など
年 代 不明
備 考 一部では黄龍と同一視されている