田村利春【タムラノトシハル】
珍奇ノート:田村利春 ― 坂上田村麿の伝説上の祖父 ―

田村利春(たむらのとしはる)とは、『田村三代記』に登場する伝説上の人物のこと。

隕石の破片から生まれて、大蛇の化身の女と結ばれたとされており、伝説における坂上田村麿の祖父となっている。


基本情報


概要


田村利春は奥浄瑠璃『田村三代記』に登場する伝説上の人物で、伝説における坂上田村麿の祖父に当たる。利春は御伽草子『田村の草子(鈴鹿の草子)』における俊佑将軍の立ち位置に当たるが、人物像や物語の展開がほとんど別物になっている。

『田村三代記』によれば、平城天皇の御代に天から降ってきた隕石の破片から生まれ、現地の管領によって帝の元に届けられた。帝は星丸(ほしまる)と名付けて乳母をつけて養育させた。星丸は7歳で習わぬ書を読み、横笛を吹けば天女が天降るほどの笛の名手となった。10歳で身長は184cmまで伸び、この年に官職を賜って二条中将利春と名付けられたとされる。

15歳の時に帝に「先帝の命日に天人を天降らせ、舞楽を奏せ」との勅命を与えられたが、利春は「天人の舞楽は天竺の梵天王の大庭でなければ奏せない」と断ったため、帝の逆鱗に触れて越前国に流刑に処された。越前国に行った利春は自らの心を慰めるために横笛を吹いていると、その笛の音に誘われて一人の美女が現れるようになった。利春は女の美貌に魅了され、やがて二人は結ばれることになった。

女は利春の子を宿したが、1年経っても2年経っても御子が生まれる気配がないので、利春が理由を尋ねると 女は「私は天竺生まれなので、その習いによって出産まで3年3ヶ月かかります」と言った。そこで利春が産屋を建てると、女は「産屋に入ってから百日百夜経つまでは中を覗かないように」と言い残して産屋に入っていった。

99日目の夜、怪しんだ利春が産屋の中を覗くと、中には30mほどの大蛇がおり、眉間に生まれた男児を乗せて遊ばせていたのが見えた。その翌日、女が男児を抱いて出てくると、利春は覗いてない様子で対応したが、覗かれたことに気づいていた女は「自分の正体は繁井ヶ池の大蛇で、正体を見られてしまったので古巣の池に帰ります」と言って、消え去ってしまった。

その後、利春は男児に大蛇丸と名付け、女が残した1本の鏑矢を乳房の代わりにして養育した。それから3年後、大蛇丸が7歳の時に利春は赦免されて都に復帰できることになり、二条に屋敷を構え、正妻を迎えてめでたく暮らしたという。ちなみに、大蛇丸は大和国の大蛇を退治したことで官職を賜って利光将軍となり、さらに後に悪玉姫と結ばれて千熊丸(後の坂上田村麿)を儲けることになる。

データ


種 別 伝説上の人物
資 料 『田村三代記』
年 代 平安時代
備 考 『田村の草子』における藤原俊祐に当たる

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