八束水臣津野命 / 淤美豆奴神【ヤツカミズオミツヌ / オミヅヌ】
珍奇ノート:八束水臣津野命(淤美豆奴神) ― 島根半島を作り上げた神 ―

八束水臣津野命(やつかみずおみつぬ)とは、『出雲国風土記』に登場する神のこと。

国引神話の主人公であり、遠くの土地を出雲国に縫い付けて島根半島を作り上げたとされている。


基本情報


概要


八束水臣津野命は『出雲国風土記』に登場する神で、同書の国引神話によれば、出雲国が小さいということで、遠くの志羅紀の三崎・北門の佐岐国・北門の農波国・高志の津津の三埼から鋤で余った土地を裂き、それに三身の綱の縄を掛けて手繰り寄せて、出雲国に縫い付けて島根半島を作り上げたとされている。

同書ではオミヅヌ(意美豆怒命・伊美豆怒命)という別名でも登場しており、これは『古事記』に登場する須佐之男命(スサノオ)の4世孫の淤美豆奴神と同神であるとされている。また、粟鹿神社の書物である『粟鹿大明神元記』では意弥都奴という神で十七世神の一柱とされており、岡山県の北居都神社の社伝では兄弟の築杵等手留比古命と協力して当地を開拓したと伝えられている。

また、三重県志摩市ではダイダラボッチのような巨人と伝えられており、人々のために山や森などを作っていたが、炭焼小屋の前で寝入っていたところ、小屋の家主に足を切り落とされてしまったという。これに怒った八束水臣津野命は人をさらうなどの悪事を働く神になってしまったので、村人たちは切り落とした足に巨大な草鞋を履かせて掲げておいたところ、八束水臣津野命が行者に化けて村にやって来て足を持ち帰ったとされている。

この民話では、八束水臣津野命は天狗山(熊野山)に棲む天狗だといわれていたため、村人たちは天狗山に祠を建てて祀ったという。なお、この天狗は熊野大社の祭神である 伊邪那伎日真名子 加夫呂伎熊野大神 櫛御気野命 だといわれることから、八束水臣津野命はこの神と同一であるともいわれているらしい。

八束水臣津野命の別名
・淤美豆奴神(『古事記』)
・意美豆怒命(『出雲国風土記』)
・伊美豆怒命(『出雲国風土記』)
・意弥都奴(『粟鹿大明神元記』)

※上記は「オミヅヌ」と読まれる

国引神話の比定地
この神話の比定地は諸説あるが、以下の場所がこれに該当するといわれている。

・志羅紀の三埼(新羅国) → 去豆の折絶(出雲市平田町~小津)から八穂米支豆支の御埼(日御碕)
・北門の佐伎国(隠岐の大宇崎) → 多久の折絶(松江市鹿島町講武)から狭田国(松江市鹿島町佐陀本郷)
・北門の農波国(松江市島根町野波) → 宇波の折絶(松江市美保関町北浦~稲積)から闇見国(松江市本症町)
・高志の津津の三埼(石川県珠洲市周辺) → 三穂の埼(松江市美保関町の美保岬)

データ


種 別 神仏
資 料 『出雲国風土記』『古事記』
年 代 神代
備 考 巨人説がある

八束水臣津野命(淤美豆奴神)の関連スポット
・美濃夜神社(三重県津市芸濃町雲林院2750)
・北居都神社(岡山県岡山市東区東平島1468)
・金持神社(鳥取県日野郡日野町金持1490)
・須多神社(島根県松江市東出雲町出雲郷須田523-1)
・道の駅 大社ご縁広場:八束水臣津野命のレリーフがある(島根県出雲市大社町修理免735-5)
・諏訪神社(島根県出雲市別所町72)
・國村神社(島根県出雲市多伎町久村1289)
・長浜神社(島根県出雲市西園町上長浜4258)
・富神社(島根県出雲市斐川町596)
・龍岩神社(島根県邑智郡邑南町八色石792)
・佐比売山神社(島根県大田市鳥井町鳥井369)