一目五先生【イチモクゴセンセイ】
珍奇ノート:一目五先生 ― 中国に伝わる5体1組の鬼 ―

一目五先生(いちもくごせんせい)とは、中国に伝わる鬼あるいは妖怪のこと。

常に5体で行動しており、人を鼻で嗅いで生気を奪うといわれている。


基本情報


概要


一目五先生は中国の浙江に伝わる鬼あるいは妖怪で、疫病が流行った年に現れるといわれている。

この5体のうち4体には目が無く、ただ1体だけが1つの目を持っている。そのため、目の無い4体の鬼は目を持つ鬼の指示に従って行動する。これにより、この目を持つ鬼は「一目先生(いちもくせんせい)」と呼ばれている。

この5体の鬼は人を鼻で嗅いで その生気を奪うとされており、鬼が嗅ぐ時には その腹が膨れていくという。この時に1体の鬼に嗅がれれば人は病を患い、5体の鬼に嗅がれれば人は死んでしまうといわれている。

『子不語』によれば、浙江の宿に泊まった銭某という人が一目五先生を目撃したとされており、この際に一目先生が嗅ぐべき人を選んだという。この逸話では、一目先生は善人・悪人・福禄のある人は嗅いではならないと言い、これらに該当しない特に取り柄の無い人を餌食にするべきだと言ったという。

データ


種 別 中国妖怪、鬼
資 料 『子不語』ほか
年 代 不明
備 考 日本の貧乏神像に影響を与えたといわれている

資料


『子不語(一目五先生)』
浙江に5体の奇妙な鬼がいる。その内の4体には目が無く、ただ1体だけが一つの目を持っている。その一つ目の鬼が物を見るので、他の鬼はこれに群がって行動する。これらは「一目五先生」と呼ばれている。疫病の流行った年に5人の鬼が袂を連ねて歩き、人が寝ているところに行って その鼻で嗅ぐ。1体の鬼が嗅げば人は病を患い、5体の鬼が嗅げば人は死んでしまう。4体の目の無い鬼は自ら判断を下せないので、目のある一目先生の号令に従っている。

銭某という人が浙江で宿を取った時、大勢の客は皆寝静まっていたが、銭某だけは起きていた。すると、突然 灯りが小さくなり、そこに5体の鬼が飛び跳ねながら現れた。そこで4体の鬼が一人の客を嗅ごうとすると、一目先生は「これは大善人だから嗅いではならん」と止めさせた。また、別の客を嗅ごうとすると、一目先生は「これは福運のある人だから嗅いではならん」と止めさせた。また、別の客を嗅ごうとすると、一目先生は「これは大悪人だから嗅いではならん」と止めさせた。そこで4体の鬼が「では先生、一体誰を食えば良いのでしょう?」と言うと、一目先生は2人の客を指して「この2人は善くも悪くもなく、福でも無く豊かでも無い。どうして食わないのか?」と言った。そして4体の鬼が群がって嗅ぐと、2人の鼻息は次第に微かになっていき、5体の腹はだんだん膨らんでいったという。